2011 Fiscal Year Research-status Report
核小体低分子RNAを基盤とした遺伝子発現制御方法の開発
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23710263
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
福田 将虎 福岡大学, 理学部, 助教 (90526691)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 核小体低分子RNA / 遺伝子発現制御 / 機能性RNA |
Research Abstract |
本研究は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の各ヌクレオチドを化学修飾する核小体低分子RNA(snoRNA)ライブラリーを作製し、「生体内で標的タンパク質発現を抑制する人工snoRNA」を構築する方法論の開発を目的としている。平成23年度は、細胞内で標的タンパク質発現を抑制するsnoRNA同定方法論を開発するため、蛍光強度で発現量を検出可能な緑色蛍光タンパク質(GFP)を標的タンパク質とした。まず、細胞内でGFP mRNAの各ヌクレオチドを2’-O-メチル化修飾するように、boxC/D型snoRNAの標的認識配列を多様化した「snoRNA発現プラスミドライブラリー」を作製した。その際、基盤となるsnoRNAとしてU20(SNORD20)RNAを用い、U20 RNA発現プラスミドを構築した後、標的認識配列をGFP DNA配列を断片化したGFP DNAライブラリーに置換した。この方法により、細胞内でGFP mRNAあらゆるヌクレオチドをメチル化可能なsnoRNA発現プラスミドライブラリーを構築した。一方で、チミジンキナーゼ(TK)を発現する細胞に、ガンシクロビル(GCV)を加えると、DNA合成が阻害され死滅することを応用したスクリーニング方法を確立するため、同一mRNAにコードされるGFP-TK融合タンパク質(GFP-TK)を発現する細胞を構築した。樹立したGFP-TKを恒常的に発現する複数の細胞株を用いて、各細胞が死滅するGCV濃度を決定した。これまでに、「細胞内でGFP mRNA上のあらゆるヌクレオチドを2’-O-メチル化修飾可能なsnoRNA発現プラスミドライブラリー」と「GFP-TK融合タンパク質を恒常的に発現する細胞」を構築することに成功し、次段階のタンパク質発現を抑制する人工snoRNAのスクリーニングを行うための準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、細胞内で標的遺伝子発現を抑制するsnoRNAのスクリーニング方法を開発するため、(1)細胞内で標的mRNAの各ヌクレオチドを2’-O-メチル化修飾可能なsnoRNAを発現する「snoRNA発現プラスミドライブラリー」を作製すること及び、(2)「GFPにチミジンキナーゼを融合したタンパク質を恒常的に発現する細胞株」を構築することを達成目標としていた。(1)では、まず、GFP DNAを酵素反応によりある一定の長さに断片化したGFP DNA断片化ライブラリーを作製した。同時に、基盤となるsnoRNAであるU20 snoRNAを細胞内で発現するプラスミドDNAを構築するため、U20 snoRNAがコードされているヒトヌクレオリンDNAをクローニングし、哺乳細胞発現用ベクターに導入した。得られたU20 snoRNA発現プラスミドから、標的認識領域のみを抜き出し、先に得られたGFP DNA断片化ライブラリーと置換することにより、GFP mRNAを標的とするsnoRNA発現プラミドライブラリーの構築に成功した。(2)では、GFP-TK融合タンパク質を恒常的に発現する細胞を樹立するため、GFP及びTKをリンカー配列を介して連結したGFP-TKタンパク質発現プラスミドを構築した。得られた発現プラスミドをHEK293細胞に形質導入し、薬剤耐性によりGFP-TKタンパク質を恒常的に発現する細胞株の樹立に成功した。また、樹立した細胞が、蛍光を発すること及びGCV投与で細胞死が誘導されることを明らかにした。以上の結果より、平成23年度における目標(1)と(2)を達成することができたため、本研究の進行状況は申請時の予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に得られた「細胞内でGFP mRNA上のあらゆるヌクレオチドを2’-O-メチル化修飾可能なsnoRNA発現プラスミドライブラリー」と「GFP-TK融合タンパク質を恒常的に発現する細胞」を用いて、「細胞内でGFP-TK融合タンパク質の発現を抑制するsnoRNAのスリーニング方法」を開発する。最終的に、人工的に構築したsnoRNAによる遺伝子発現制御が可能であるかを検証する。研究は以下の方法に従い遂行する。(1)GFP-TK発現細胞に、snoRNA発現プラスミドライブラリーを遺伝子導入し、(2)培地中に細胞が死滅する濃度のGCVを添加し、培養を続ける。snoRNAを発現しないプラスミドDNAを遺伝子導入した細胞が死滅し始めたところで、snoRNAライブラリーを導入した細胞群から死滅した細胞を除去し、生存細胞を回収する。回収した細胞からDNAを抽出し、PCRによりsnoRNA配列を増幅する。(4)増幅したDNAを細胞内発現ベクターに再度クローニングし、snoRNA発現プラスミドライブラリーを再構築する。(1)から(4)までの一連の操作を繰り返すことにより、GFP-TK発現を抑制するsnoRNAを濃縮する。最後に、(4)で増幅したDNAの配列解析を行い、snoRNA配列を決定する。上記スクリーニングにより同定したsnoRNAの細胞内発現プラスミドを構築し、GFP発現抑制効果を蛍光強度測定により評価し、タンパク質発現を抑制するGFP mRNA上2’-O-メチル化修飾部位を決定する。標的タンパク質発現抑制効果を示す最適な発現条件を決定し、人工的に構築したsnoRNAを基盤とした遺伝子発現抑制能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有の研究設備を利用しながら、平成24年度の研究を遂行するため、以下の研究経費使用を計画している。研究費は、(1)研究を円滑に遂行するための材料費・消耗品費及び、(2)研究遂行に必要な情報収集と研究成果の発表に関わる経費(旅費、論文投稿費)に使用する予定である。具体的な材料・消耗品として、DNA合成酵素、DNA修飾酵素、DNA配列解析用試薬、DNA精製用カラム、オリゴDNA合成、RNA合成酵素、細胞培養用試薬、細胞培養用器具、電気泳動用試薬を使用する。また、細胞スクリーニング及び分子生物学・生化学的実験を効率よく行うために、電気泳動装置が必要である。平成24年度は細胞スクリーニングとDNA塩基配列解析の頻度が高くなるため、研究を遂行するためには特に、細胞培養用試薬、細胞培養用器具、DNA合成酵素、DNA配列解析用試薬が必要になる。
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Research Products
(10 results)