2011 Fiscal Year Research-status Report
相互作用解析による創薬スクリーニングのための微量試料用差検出NMRプローブの開発
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23710273
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 雅人 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, その他 (60392015)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロコイルNMR |
Research Abstract |
本研究では、二つのNMRスペクトルの差をとるため、二つのマイクロコイルが同じ磁場強度中に存在し高分解能であることが重要になる。特に、マイクロコイルNMRでは試料空間が小さいために室温シムでは磁場均一度調整を行うことができない。そのため、マイクロコイル近傍の素材の磁化率が重要である。特に上から挿入するプローブの場合、小型化と磁化率の調整は重要である。そこで、磁化率の調査と差スペクトルを取るために必要なマイクロコイルの設計と製作を行った。本年度は、特に、基板型マイクロコイルについて調査した。基板型マイクロコイルはプリント基板を基板加工機によって加工することで作製できるマイクロコイルである。その特徴として、回路形状が2次元に制限されてしまうものの、位置や形状の精度は高く設計どおりにマイクロコイルを作製できる利点がある。1枚の基板上に基板型マイクロコイルを2個作ったマイクロコイルを製作し、磁化率測定や磁場均一度について調べた。測定サンプルは水とし、水をサンプル管に入れず基板型マイクロコイル全体を水に浸す方法で測定した。この条件では広い範囲の水を対象にNMR測定することになるので磁場の均一度についてより厳しい条件での測定となる。基板の磁化率や他の素材の磁化率を調整するためにさまざまなマイクロコイルを製作した。二つのマイクロコイルが10mm離れた状態で、室温シムを使って二つのマイクロコイルNMRのスペクトル位置を調整できることを確認した。さらに、この状態で室温シムによってスペクトルの線形はほとんど変化しなかった。相互のスペクトルの位置関係と線形を個別に制御できることがわかり、差スペクトルNMRを行うために必要な条件を調べることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の2点が重要となる。ひとつは、差スペクトルを行うためにスペクトルを調整可能かという点、もうひとつは、高分解能なNMRスペクトルを得るためにマイクロコイルNMRでのスペクトルの線形である。差スペクトルを得るために、周波数位置は室温シムで調整可能であることが確認した。また、信号強度についても調整可能であることを確認した。これらのことから、差スペクトルを取得する条件については十分検討できた。マイクロコイルNMRのスペクトルの線形については、素材や加工方法、加工で発生するバリなどによって変化してしまい、最良の条件を導き出すことができなかった。いくつかの条件では良好な結果が得られるものの再現性が低く、磁場の均一度を決定付ける条件について今後さらなる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、精度や製作面で有利であるため基板型マイクロコイルについて注力して研究を行った。しかし、感度やスペクトルの線形の面で他の形状のほうが有利である可能性がある。したがって、今後はソレノイド巻きやそれ以外の形状について検討を進める。また、磁化率についてもさらに詳細に調査を行うことで、使用している素材の最適化を進める。差スペクトルを得るための条件についてはすでに検討したため、スペクトル線形の向上を重点的進めることが重要である。これにより、標的タンパク質と化合物を用いて実際に分子間相互作用解析に適用できるかを調べることができるようになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、本年度と同様にプローブの部品や素材を中心に購入する。またマイクロコイル製作のための機材なども引き続き購入する。必要であれば自動分注機一式も購入するが、プローブ部品などを購入すると予算額の面で厳しい可能性がある。その場合は借りることや代替手段を検討したい。
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