2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710276
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山越 博幸 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30596599)
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Keywords | ラマン / 顕微鏡 / タグ / イメージング / アルキン |
Research Abstract |
大きな蛍光標識の影響を受けずに細胞内で低分子化合物を観察するために小さなラマンタグの開発を行ってきた。これまでにアルキンが小さな標識として優れた性質を持つことを明らかにしているが、その一般性については未検討であった。アルキンタグラマンイメージングを一般的な方法として広めるためにはアルキン化合物の網羅的な理解が不可欠といえる。 そこで3年計画の2年目は初年度に開発したアルキンタグの一般性を見出すべく、アルキン化合物の詳細な構造ラマンシフト/強度相関を調べた。アルキン化合物のラマンシフトや強度に関する報告はなされているが、データは限られたものであり、測定条件にも課題が残されていた。そのため市販のアルキン化合物EdUを内標準とする独自の方法を開発し、ラマン強度の比較を行った。89種のアルキン化合物を置換基の違いにより14グループに分類することで、構造とラマンシフト/強度に関する相関が得られた。結果、アルキンの種類によって数百倍程度のラマン散乱強度差が観察された。この散乱強度の違いについては共役系の寄与が重要であり、アルキンの伸縮方向に共役系が広がっているほど顕著に散乱強度の増大が観察された。ラマンシフトについては知られている通り、末端アルキン、シリル置換アルキン、ハロゲン置換アルキン、ジイン、内部アルキンの順に大きくなった。 構造ラマンシフト/強度相関の知見を活かすと複数の化合物を同時に生きた細胞の中で観察できると期待された。実際に、EdUとラマンシフトが異なるアルキン化合物AltQ2を同時に処理した細胞のラマンイメージングを行うと異なる分布が得られ、マルチアルキンタグラマンイメージングが実際に行うことができた。 現在、ラマンタグを機能性分子に導入することで、有用性の拡張を目指している途上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年計画の初年度に「アルキンタグの開発」と「局在既知のモデル化合物を用いた概念実証」に成功していた。そこで計画2年目はラマンタグの応用に向けて、アルキン化合物の網羅的な解析を行い、構造ラマンシフト/強度相関を明らかにすることができた。すなわち、89種のアルキン化合物の構造ラマンシフト/強度相関を調べることでアルキン標識化合物を設計するための指針が得られた。また、実際に様々なアルキンタグを導入したユビキノン誘導体を合成し、得られた相関が実際に細胞を用いたラマンイメージングに応用できることを確認した。さらに得られた構造ラマンシフト/強度相関をもとにして、異なるラマンシフトを示すアルキンタグを同時に用いることで、複数の分子を生きた細胞の中で同時に観察できるようになった。これら研究成果については、Journal of the American Chemical Society 2012, 134, 20681-20689およびNature Protocols 2013, 8, 677-692にて報告することができ、その他日本薬学会第133年会や招待講演などにおいて成果を口頭発表した。 以上のようにラマンタグイメージングの一般性を明らかにし、2年目で複数の科学雑誌にて成果を報告することができたことから、本研究の達成度は当初の計画以上に進展していると位置づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の2年目までにラマンタグの開発と一般性について調べることができたため、最終年度は「ラマンタグの応用」を行う予定である。これまでに得られた知見を利用して、機能性分子にラマンタグを結合させることにより、生細胞ラマンイメージングに用いるラマンプローブが開発できると期待される。具体的には特定のオルガネラに集積するアルキン化合物を設計、合成し、ラマンオルガネラマーカーの開発を行う。ラマンイメージングは蛍光イメージングとは異なり、発展途上のイメージング技術であるため、基礎的なプローブやツールが皆無である。したがって、オルガネラマーカーなどの開発が急務である。 また、アルキン以外にもニトリルや重水素がラマンタグとして可能性を持つことが明らかになっているため、これらのタグを用いた生細胞イメージングについても検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3年計画の最終年度は当初の計画と大きく変わらない実験計画であるため、研究費の使用計画も当初の通りである。すなわち、消耗費全体の約3割を有機合成用の試薬および器具に充てる予定である。また、残り7割の半分は合成化合物の活性を評価するための試薬および器具に充て、もう半分は細胞培養のための試薬およびプラスチック器具類に使用する計画になっている。最終年度であるため、昨年度以上に成果発表に力を注ぐ予定であり、雑誌投稿費用や学会発表旅費にも直接経費を使う計画である。また、印刷費および複写費に数パーセントの研究費を充てる予定である。
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Research Products
(5 results)