2011 Fiscal Year Research-status Report
ニホンザルの分布回復が冷温帯林における生物間相互作用に与える影響
Project/Area Number |
23710279
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
江成 広斗 宇都宮大学, 農学部, 助教 (90584128)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ニホンザル / 冷温帯林 / 食糞性コガネムシ / 生物間相互作用 / 豪雪 / 白神山地 / 八甲田 |
Research Abstract |
本研究はニホンザル(以下、サルとする)の分布回復が、冷温帯林における生物間相互作用(在来の生態系プロセス)に及ぼす影響を特定することを目的とする。当該年度において、主に豪雪地である白神山地(サル生息地域)及び八甲田山系(サル不在地域)における各種生態調査を進めた。 具体的には、(1)白神山地において、サルによる樹皮採食に伴う被採食植物の植物生理学的影響の評価を目的としたモニタリング木の選定、(2)両地域において、哺乳類各種の種子散布能力測定のための糞収集と糞内検出種子の同定、(3)両地域において、サル糞に飛来する食糞性コガネムシの収集と群集評価、の3点であった。このうち、(1)については、2012年冬季が豪雪であったことに伴い、当初予測していなかった木本植物(特に高木)への採食痕が多く確認され、より多様な樹木種をモニタリング木として選定することができた。(2)については、八甲田山系において、哺乳類種により、糞の収集成功率に差異があったため、次年度以降も継続したサンプリングが必要となる。(3)については、当初の予定通り各地で食糞性コガネムシの収集が完了できたと同時に、事前に予備的に収集していた食糞性コガネムシのサンプルも利用することで、サル生息の有無が当該群集に及ぼす影響の定量化に関する第一報の論文を出版することができた。 併せて、関連研究の情報収集と本研究の成果発表のため、国内2学会、海外1学会に参加した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述のように、2012年1~3月の予期せぬ豪雪に伴い、サルの冬季採食食物がこれまでと大きく変化したことが認められた。これに伴って、サルの冬季の木本植物への採食圧が当該植物に与える影響は、より多岐に及ぶ可能性がでてきた。そのため、当初予定していなかった課題ではあるが、積雪量とサル冬季採食行動との関連性に関する詳細な生態学的考察も可能となった。この成果は現在論文を執筆中である。 また、当初の予定通り、食糞性コガネムシのサンプル収集が完了したことで、サルをはじめとする各種哺乳類の在・不在が当該群集に及ぼす影響の定量化に成功できた。この影響は極めて明瞭なものであることが明らかとなり、この成果を国際誌に投稿し、受理された。 上記2点の理由から、本研究課題は当初計画以上に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
豪雪地である白神山地と八甲田山系で実施した調査と同様に、今後は寡雪地である栃木県内の山地を対象に、(1)サルの樹皮や冬芽の採食が被採食植物に与える植物生理学的影響評価のためのモニタリング木の選定、(2)各種哺乳類の種子散布能力の評価のための糞収集と糞内検出種子の評価、(3)サル糞に飛来する食糞性コガネムシの収集と群集構造の評価、の3点を実施する。また、白神山地に設定したモニタリング木を対象に、枯死木の有無や着葉状況の確認を目的としたモニタリング調査を実施し、サルの樹皮・冬芽の採食が木本植物に及ぼす影響の定量化を試みる。併せて、昨年度からの継続課題として、八甲田山系における哺乳類各種の種子散布能力の推定のための糞収集作業を継続する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで白神山地と八甲田山系中心に行ってきた各種生態調査を、栃木県内各地の山林において展開する。次年度は、主にこれらの旅費に研究費を使用する。また、上記のように。2012年度は八甲田山系における各種哺乳類の糞の収集に関する調査努力量を高める必要がある。そこで、昨年度からの若干の繰り越し予算(学会参加を当該研究費を使用しなかったために生じたものである)も当該調査の旅費に使用する。 また、次年度は成果報告のための各種学会発表にかかわる費用や、論文執筆にかかわる費用(英文校閲費、投稿料)に対して、当該研究費を主に使用していきたいと考えている。
|
Research Products
(10 results)