2012 Fiscal Year Research-status Report
ニホンザルの分布回復が冷温帯林における生物間相互作用に与える影響
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23710279
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
江成 広斗 宇都宮大学, 農学部, 助教 (90584128)
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Keywords | ニホンザル / 冷温帯林 / 食糞性コガネムシ / 積雪 / 白神山地 / 八甲田 / 日光 |
Research Abstract |
本研究は、積雪地帯に生息するニホンザルの分布回復が、冷温帯林における森林生態系プロセスに与える影響の定量評価を目的として実施されている。当該年度において、豪雪地である青森県(白神・八甲田山系)だけでなく、寡雪地である栃木県においても、当該目的を達成するための各種生態調査を進めた。特に、(1)日光山系におけるニホンザルによる樹皮採食に伴う非採食植物の植物生理学的影響の評価を目的としたモニタリング対象木の設定と評価、(2)多雪・寡雪両地域における、哺乳類各種の種子散布能力測定のための糞収集と糞内検出種子の同定、(3)同地域におけるニホンザルの糞に飛来する食糞性コガネムシの収集と群集構造の評価、などに取り組んだ。(1)に関して、寡雪地の日光山系では、ニホンザルだけでなく、ニホンジカの高密度化に伴い、これら2種の採食に伴う相乗的な影響が、木本植物(アオダモ・ノリウツギ等)の樹形や生残に及ぼす植物生理学的影響が確認された。一方で、(2)・(3)において、寡雪地のフィールドとして当初設定していた栃木県内のフィールドにおいて、哺乳類各種の糞から、福島原発事故に由来する放射性核種が検出され、調査地域の変更が必要となった。そこで、新たな調査地選定作業を行った。 本研究を通じて得られた生態学的知見をベースに、当該年度では関連論文を3編執筆し、それらの関連成果について国内学会において発表した。また、研究成果に関する市民向けの情報提供を目的に、解説文などをホームページに公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた(1)ニホンザルによる被食植物の植物生理学的影響の評価、(2)哺乳類各種による種子散布評価、(3)哺乳類各種の糞を利用する糞虫群集の評価、(4)糞虫による二次的種子散布に関する調査、の4項目に関して、多雪地における野外調査はおおむね順調に進み、(3)と(4)の項目については予定より早く調査を終了した。(1)と(2)については、最終年度も継続して実施することで、総合的な解析・評価を最終年度に実施する予定である。寡雪地における同様の調査について、哺乳類各種の糞を使用する調査に関して、上述の理由から、調査地の変更が必要となった。すでに実施済みの調査結果を活用しながら、新たに設定した調査区において次年度も調査を継続する予定である。 昨年に引き続き、2012年度冬季は、北関東・東北地域では積雪量が例年と比較して大幅に増加し、ニホンザルの資源利用・空間分布が大きく変化したことが確認された。このような突発的な外部環境の変化が、ニホンザルを中心とした森林生態系内のプロセスに及ぼしうる影響評価について、2011年度に引き続き評価を実施することができた。 既に終了した調査研究の成果については、国際誌に投稿し、複数が受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
栃木県内で採取した哺乳類糞における放射性核種の混入に伴って、哺乳類各種の種子散布能力の評価のための糞収集と糞内検出種子の評価、ニホンザルの糞に飛来する食糞性コガネムシの収集とその群集構造の評価について、奥羽山脈南西部(主に山形県内)に調査フィールドを移動させ、調査研究を継続する。併せて、これまでに得られたデータの評価・解析、成果報告のための学会発表や論文執筆などに取り組む。また、本研究から得られた成果を、広く市民と共有することを目的に、ホームページを利用した情報提供を積極的に実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の理由から、当該調査1~2年度目に実施してきた生態調査の一部を、奥羽山脈西側(主に山形県内)において実施するため、それに関連する旅費に研究費を使用する。併せて、各地に設定したニホンザル採食に伴う木本植物の植物生理学的影響評価のためのモニタリング作業を継続するための費用に当該研究費を使用する。本研究プロジェクトの最終年度に当たる2013年度は、成果報告のための各種学会発表にかかわる費用や、論文執筆にかかわる費用(英文校閲費、投稿料)に対しても、当該研究費を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)