2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの分布回復が冷温帯林における生物間相互作用に与える影響
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23710279
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
江成 広斗 山形大学, 農学部, 准教授 (90584128)
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Keywords | ニホンザル / 冷温帯林 / 食糞性コガネムシ / 積雪 / 白神山地 / 八甲田 / 朝日山地 / 種子散布 |
Research Abstract |
ニホンザルの分布回復が、冷温帯林に成立する在来生態系プロセスに及ぼす影響を特定することを目的とした研究として、当該最終年度は寡雪地である朝日山地の低標高帯における各種生態調査を新たに開始した。当初計画では、寡雪地は栃木県内の山地のみで実施予定であったが、福島原発事故の影響により、採取する哺乳類種の糞から放射性核種の混入が見られたため、当該年度から、寡雪地の調査フィールドを上記地域に移動させた。朝日山地では、哺乳類各種の種子散布能力の評価のための糞収集と糞内検出種子の評価、ニホンザルの糞に飛来する食糞性コガネムシの収集とその群集構造の評価を実施した。食糞性コガネムシの群集構造については、豪雪地である白神・八甲田山系と同様に、哺乳類各種の在・不在が強く影響していることを明らかにした。 豪雪地である白神山地では、(1)ニホンザルによる樹皮採食に伴う非採食植物の植物生理学的影響のモニタリングを継続させると同時、(2)哺乳類各種の種子散布能力の評価を試みた。(1)については、当該年の降雪量に伴ってニホンザルの樹皮の採食選択性は変化するため、個々の木本植物種に及ぼしうる影響も毎年一定ではないことを新たに確かめた。(2)については、個体数が豊富な果実食者であるテンやイタチも、ニホンザルと類似した液果を採食することが明らかとなった。しかし、前者2種は、当該餌が分布する森林パッチ内で糞をする傾向が強いこと、更には、果肉が十分に除去されないまま液果を糞として排出するケースも多く見られたことなどから、種子散布者としての役割はニホンザルと同等であると結論付けることは難しい可能性が考えられた。 最終年度は、これまでの成果を踏まえて、学会発表、専門書の執筆、論文執筆などを積極的に行うと同時に、成果の社会的普及を目的としたホームページを活用した情報公開を継続的に実施した。
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Research Products
(13 results)