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2012 Fiscal Year Research-status Report

樹木との共進化を考慮した植食性昆虫群集の多様性形成機構の解明

Research Project

Project/Area Number 23710281
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

平尾 聡秀  東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (90598210)

Keywords生態学 / 昆虫 / 森林 / 生物多様性 / 共進化
Research Abstract

森林生態系における植食性昆虫の多様性は膨大な生物資源であり、近年その減少に対する懸念と保全の必要性に注目が集まっている。しかし、樹冠の植食性昆虫の多様性は定量的に評価されておらず、その形成機構も明らかにされていない。
本研究では、樹木との共進化を考慮して、植食性昆虫群集の多様性の形成機構を解明することを目的とする。具体的には、1. 植食性昆虫の種多様性に対する樹木の系統的制約、2. 植食性昆虫の食性進化、3. 樹木と植食性昆虫の共種分化の重要性を検証する。また、相互作用に基づいて植食性昆虫の多様性動態モデルを構築し、生物多様性の保全に有効な森林生態系の管理シナリオを提案する。
平成24年度は、平成23年度に引き続き、秩父山地の冷温帯林に設置した20ヶ所の調査区において、樹木と植食性昆虫・葉の特性分析用の試料・樹木と植食性昆虫の系統推定用の試料を採取した。葉の物理化学特性として、LMA・CN・総フェノール量・縮合タンニン量・リグニン量を測定し、資源の質を定量化した。また、樹木と鱗翅目の科レベルの系統情報を既存データに基づいて編集した。
これらのデータに基づいて、植食性昆虫の食性進化を検証した。その結果、樹木の系統的多様性が高い森林ほど、食性の広いジェネラリスト種が多くなるという傾向は見られず、必ずしも拡散共進化が樹木と植食性昆虫の相互作用を決定しないことが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、樹木との共進化を考慮して、植食性昆虫群集の多様性の形成機構を解明することを目的としている。具体的には、樹木と植食性昆虫の相互作用に関する3つの作業仮説を検証する。1. 植食性昆虫の種多様性に対する樹木の系統的制約、2. 植食性昆虫の食性進化、3. 樹木と植食性昆虫の共種分化の重要性。最終的に、樹木との相互作用に基づく植食性昆虫の多様性動態モデルを構築し、森林の人為的撹乱が生物多様性に及ぼすリスクを予測することによって、その保全に有効な生態系管理シナリオを提案する。
平成24年度は、作業仮説2「植食性昆虫の食性進化」の検証を行うとともに、作業仮説3「樹木と植食性昆虫の共種分化の重要性」の検証に着手しており、おおむね順調に研究が進展しているといえる。樹木と植食性昆虫の種多様性の調査や化学分析については、計画通りに作業を完了した。植食性昆虫の系統解析と動態シミュレーションについては、平成25年度に取り組むことを予定している。

Strategy for Future Research Activity

今後は、樹木と植食性昆虫の相互作用に関する3つの作業仮説のうち、「樹木と植食性昆虫の共種分化」に関する仮説検証と植食性昆虫の多様性動態モデルの解析を進める。前者の仮説の下では、樹木の系統的多様性が高いほど、樹木と植食性昆虫の系統関係の一致度が低いことが予測される。この仮説を検証するには、樹木と植食性昆虫の系統情報を得る必要がある。樹木と植食性昆虫の科レベルの系統情報は先行研究から得られているため、最初に科レベルで仮説検証に取り組む。さらに、カエデ属とハマキホソガ属の相互作用に着目することで、それぞれの分類群について塩基配列の決定と系統解析を進め、種レベルで仮説検証を行う予定である。
後者の動態モデルでは、樹木と植食性昆虫の相互作用に関するパラメーターを抽出し、植食性昆虫群集の多様性パターンを説明する食物網モデルを構築する予定である。このモデルに基づいて、樹木種構成の変化が植食性昆虫群集の多様性に及ぼす影響をシミュレートし、森林伐採や人為撹乱に伴う樹木種構成の変化が森林生態系の生物多様性に及ぼす影響を予測する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成24年度は、葉の化学特性の分析、樹木と植食性昆虫の塩基配列の解析を重点的に取り組んだため、物品費の支出が当初の計画を上回った。その一方で、平成23年度にある程度試料を得ていたため、野外調査に伴う旅費は当初より少なくなった。また、塩基配列の解析についても、外注サンプル数が当初の計画を下回った。その結果、「次年度に使用する予定の研究費」が生じた。
平成25年度は、平成24年度に引き続き、樹木と植食性昆虫の配列解析を進める予定であり、分子生物学実験に関する物品費の支出が多く見込まれる。また、塩基配列解析の外注サンプル数がこれまでより増え、その他費目の支出が多くなると見込まれる。その一方、平成23年度と平成24年度の野外調査で十分な試料が得られたため、野外調査に伴う旅費支出は少なくなると見込まれる。また、人件費・謝金の支出も予定していない。平成24年度に生じた「次年度に使用する予定の研究費」は、物品費とその他に使用予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2013

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results)

  • [Journal Article] Species abundance distributions of moth and beetle assemblages in a cool-temperate deciduous forest2013

    • Author(s)
      Toshihide Hirao, Masashi Murakami & Yasuhiro Kubota
    • Journal Title

      Insect Conservation and Diversity

      Volume: 6 Pages: 494-501

    • DOI

      10.1111/icad.12006

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 生物多様性の維持機構の解明に中立理論が果たす役割2013

    • Author(s)
      平尾聡秀・久保田康裕・村上正志
    • Journal Title

      生物科学

      Volume: 64 Pages: 242-249

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2014-07-24  

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