2011 Fiscal Year Research-status Report
外来生物の分布拡大加速化を予測する予兆シグナルの開発
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23710285
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
瀧本 岳 東邦大学, 理学部, 講師 (90453852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 外来生物 / 分布拡大予測 / 個体ベースシミュレーションモデル / アリー効果 / カワヒバリガイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、低密度状態の外来生物の空間分布パターンから、その分布拡大加速化の予兆となるシグナルを見つけ出すための基本理論を構築することである。また、開発した予兆シグナルを実際の外来生物に適用し、分布拡大を予防するためのモニタリングの枠組みを提案することである。具体的には次の3項目を行うことになっている。(1)分布拡大加速化の予兆シグナルの開発。(2)既存データへの予兆シグナルの適用。(3)霞ヶ浦のカワヒバリガイへの適用。これら3項目について、H23年度には以下の研究内容を実施した。(1)については、予兆シグナルを開発するための空間明示的個体ベースシミュレーションモデルを構築・解析した。分布拡大の予兆シグナル候補として、空間メッシュ内個体数分布の標準偏差、歪度、尖度のほかに、分散平均比、森下のIδ指数、平均こみあい度、変動係数(標準偏差/平均)について調べた。その結果、変動係数が有力な予兆シグナル候補と考えられた。また、予兆シグナルが示す傾向は空間データの格子サイズに大きく依存しないことを示唆する結果を得た。また、これらの予兆シグナルは、人口学的確率性によるアリー似効果による時間遅れにも使えることを示唆する結果も得た。さらに、シミュレーションモデルを高速化するための並列化を試みた。(2)については、千葉県で問題となっている外来アライグマの既存データを用いて分布拡大予測モデルの構築を行った。基礎的な分布拡大予測モデルを作成することができたが、より信頼性の高い予測を得るためには、詳細な個体群動態プロセスをモデルに組み込む必要が明らかになった。(3)については、現時点での霞ヶ浦での分布状況を把握するための調査を開始した。また、分布拡大を左右すると考えられる環境要因の調査も併せて開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目的として設定している上記3項目の全てについて、計画していた程度の進捗を得ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記3項目の(1)については、モデル解析を進め、投稿論文の準備を開始する。(2)については、アライグマの個体群プロセスを組み込んだより具体的な分布予測モデルを開発する。(3)については、霞ヶ浦での現時点での分布状況とその環境条件依存性を明らかにするためのデータを収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では計算負荷の高いコンピュータ処理を行うため、H23年度に高性能のデスクトップコンピュータの購入を予定していたが、プログラミングの工夫により現有のコンピュータシステムでもひとまず十分なパフォーマンスが得られることが分かったため、コンピュータの購入を見送った。そのため約3000千円の「次年度使用額」が生じた。H24年度は当初の予定どおり、野外調査用具購入や野外調査・資料処理補助のための謝金、学会参加旅費などに研究費を使用する。また生態系管理理論に関するシンポジウム(2012年10月、於東邦大学)を開催し、予兆シグナル開発・外来生物管理に造詣の深い海外研究者を招聘する。このシンポジウム講演者らと外来生物カワヒバリガイの管理に関して意見交換を行いたい。H23年度の生じた「次年度使用額」の一部は、この研究者招聘費用に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)