2011 Fiscal Year Research-status Report
照葉樹林帯における外来植物の分布拡大と地域に適した植物資源保全に関する研究
Project/Area Number |
23710287
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
小坂 康之 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (70444487)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / ラオス / インド / 生物多様性 / 生物学的侵入 |
Research Abstract |
2011年7月1日から9月30日まで3か月間、インドでのカウンターパートであるRajiv Gandhi Universityを拠点にして、同大学の若手研究員や、同大学と提携関係にあるBomdila Collegeの学生らとともに、アルナーチャル・プラデーシュ州の外来植物の分布と植物資源利用、村落の開発の歴史に関する調査を行った。本調査の結果に、これまでのデータを加え、論文「インド、アルナーチャル・プラデーシュ州の暮らしにおける多様な植物資源の利用と管理」にまとめ、ヒマラヤ学誌第13号に投稿した(現在、印刷中)。調査結果のうち土地利用の歴史に関するデータは、Human Ecology誌に投稿して改訂中の論文「On the introduction of paddy rice cultivation by swiddeners in Arunachal Pradesh, India」に反映させた。 また2012年3月21日から3月31日まで、ラオスのカウンターパートであるラオス国立大学林学部の若手研究員とともに、北部のシエンクワン県とフアパン県において、外来植物の分布、乾季の水田植生、植物資源利用に関する調査を行った。本調査結果に、これまでのデータを加え、Economic Botany誌に投稿するための論文を執筆中である。 そして2012年3月20日に、日本生態学会全国大会第59回大会の企画集会「里山における在来知と生物多様性(企画代表者:日鷹一雅・愛媛大学准教授)」において、「ラオスにおける水田農耕生態系の生物多様性とその利用」と題する講演を行った。 これらの知見と成果は、これまで十分に報告されてこなかった照葉樹林帯の植物資源管理をはかる上で、重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成23年度には、インド北東部とラオスにおいて、幹線道路に沿って複数のプロットを設定し、外来植物の広域分布を明らかにするとともに、地域住民に、外来植物の移入経路、移入年代、現地名、有用性、有害性について聞き取り調査を行うことを予定していた。そして実際の現地調査において、その目標をほぼ達成できたといえる。 具体的には、まずインド北東部では、標高50メートルから標高2800メートルまでの幹線道路沿い(ゴウハティからテズプール経由でイタナゴルまで、ゴウハティからバルクポン、ボンディラ経由でディランまで、イタナゴルからジロ、ダポリジョ、アロ経由でパシガートまで、イタナゴルからデマジ、ノースラキンプル経由でパシガートまで)の外来植物の分布を記録した。また、標高3000メートル以上では、ディラン地区において、牧畜民の村落と放牧地を結ぶトレッキングルートを踏査した。さらに、1947年のインド独立以降に水田稲作を導入した焼畑民の村落(標高1500メートル以下)において、村落の歴史に関する聞き取り調査と、新たに拓かれた水田における草本植生の調査を行った。 次にラオスでは、首都ビエンチャンからプークーンまでの国道13号線、プークーンからムアンカムまでの国道7号線、ムアンカムからナムヌーンまでの国道1C号線、ナムヌーンからサムヌアまでの国道6号線に沿って外来植物の分布を記録した。またビエンチャン、ポーンサワン、サムヌアの市場において販売されている野生有用植物を記録した。
|
Strategy for Future Research Activity |
インド北東部とラオスにおける外来植物の分布について、まだ把握していない地域(インドのアルナーチャル・プラデーシュ州東部、ラオスの中南部)を訪問して広域調査を行う。同時に、各地域の住民に、外来植物の移入経路、移入年代、現地名、有用性、有害性について聞き取り調査を行う。特に、侵略的外来植物として地域の自然環境や生業活動に大きな影響を与えていることが判明した種については、重点的に調査する。 また、市街地からの距離や土地利用の形態を考慮して複数の村落を選定し、開発の歴史や土地利用が外来植物の分布に与える影響を分析する。特に、「水田には中南米やアフリカ、ヨーロッパ原産の外来植物が侵入しにくい」という仮説を検証するために、異なる開墾後年数の水田において植生調査を行う。 さらに、外来植物だけでなく、在来の植物資源の利用と管理についても情報を収集する。特にラオスでは、2001年から市場で販売されている野生有用植物のインベントリー作成を継続しており、今後はインド北東部でも同様の調査を行う。 調査で得られた結果は、生態学会や熱帯生態学会、民族自然誌研究会において随時発表するとともに、Human Ecology誌、Economic Botany誌、Mountain Research and Development誌などに論文を投稿する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、夏季にラオスでの現地調査、冬季にインド北東部での現地調査を、それぞれ1回ずつ予定している。そのための海外渡航費と現地調査にかかる経費が、年度予算の6-7割程度と、最も高い比重を占める。 また、現地調査に必要なデジタルカメラや、日本を含むアジア各地の植物図鑑や農林畜産業、民族誌に関する文献資料の購入を予定している。 そして、現在執筆中の論文「Non-crop edible plants in paddy fields and their use in mixture in northern Laos」をEconomic Botany誌に投稿するため、英文校正に研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)