2012 Fiscal Year Research-status Report
照葉樹林帯における外来植物の分布拡大と地域に適した植物資源保全に関する研究
Project/Area Number |
23710287
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
小坂 康之 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (70444487)
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Keywords | 生物学的侵入 / 外来植物 / 植物資源保全 / 照葉樹林 / 国際研究者交流 / ラオス:インド |
Research Abstract |
近年、多くの外来植物が大陸部アジアの照葉樹林帯とその周辺において分布を拡大しており、地域の植生や生業に影響を与えている。そのため2011年度に引き続き、外来植物の分布状況、来歴、有用性、有害性を調査した。 2012年7月23日から8月1日まで、ラオス中部のビエンチャン県と、北部のシエンクワン県・フアパン県の幹線道路沿いにおいて、カウンターパートであるラオス国立大学林学部の若手研究員とともに、外来植物の分布と来歴、雨期の水田植生、植物資源管理に関する調査を行った。その成果は、ただいまEconomic Botany誌に投稿を準備中の論文「Wild edible herbs in paddy fields and their sale in mixture in Houaphan Province, Laos」に反映させた。 また2012年5月1日から10月31日まで、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のカウンターパートであるラジブ・ガンディー大学地理学科のトモ・リバ教授が来日したため、京都府と滋賀県の各地において土地利用と外来植物の分布を調査し、インド北東部の事例と比較した。 そして研究成果をまとめ、2012年6月17日の熱帯生態学会で「Distribution patterns of alien plants in Arunachal Pradesh, India」、同年7月21日の民族自然誌研究会で「自然をよむ:アルナーチャルにおける農事暦と在来知識」と題した発表を行った。さらに京都大学学術出版会で印刷中の著書「森のチベット-東ヒマラヤの高所文明」において「東ヒマラヤの植生に刻まれた歴史」など4章の分担執筆を行った。 これらの成果は、これまで十分に報告されてこなかった照葉樹林帯の植物資源を明らかにし、その管理をはかるための基礎となる点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2012年度には前年度に引き続き、インド北東部とラオスにおいて、外来植物が分布を拡大する過程とその影響を調査する予定であった。 ラオスでは雨期の7月に、首都ビエンチャンからプークーンまでの国道13号線、プークーンからムアンカムまでの国道7号線、ムアンカムからナムヌーンまでの国道1C号線、ナムヌーンからサムヌアまでの国道6号線に沿って外来植物を調査し、昨年の乾期に行った調査結果とあわせて解析した。そして調査結果をまとめて投稿論文を準備中であり、順調に進展している。 またラオスに隣接するタイ東北部において、コンケン県、ロイエット県、ブリラム県、スリン県、ヤソトン県、ウボンラーチャターニー県の幹線道路沿いで、外来植物の分布と在来植物資源利用を記録した。タイでの調査は当初予定していなかったが、ラオスに隣接していながらラオスよりも早くから開発の影響を強く受けた地域として、比較分析を行いたい。 インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州とナガランド州では政情が不安定なため、現地調査を行うことができなかった。今後の政情により、インド北東部以外に調査地を変更することも考えている。一方で、これまでのインド北東部での調査結果をまとめ、2013年度に京都大学学術出版会から出版される著作「森のチベット-東ヒマラヤの高所文明」において4章分の執筆を担当した。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大陸部アジアの照葉樹林帯とその周辺地域において、外来植物の調査を予定していたにもかかわらずまだ調査を行っていない地域(特にラオスの中南部)を訪問する。また新たな調査地の候補として、タイとミャンマーを考えている。タイはラオスに隣接しながらラオスよりも早くから開発の影響を受けた地域、ミャンマーはインド東北部に隣接していながら古くから王朝が栄えた歴史のある地域として、比較分析を行う。広域調査を行う際には、Ageratina adenophora、Bidens pilosa、Chromolaena odorata、Mimosa pigra、Solanum carolinenseなどのように、大陸部アジアの在来植生を大きく改変している種に焦点を当てて、その来歴や、生態系や生業への影響を調査する必要がある。さらに、これらの外来植物が原産地である南米でどのように生育しているかを調査することも重要である。南米で現地調査を行うことができれば一番良いが、難しい場合には各種文献から情報を収集する。外来植物とともに在来植物資源のインベントリー作成を継続するため、訪問した土地の市場で販売される野生有用植物を記録する。 調査で得られた結果は、熱帯生態学会、熱帯農業学会、自然地理研究会において随時発表するとともに、Economic Botany誌やMountain Research and Development誌、Tropics誌などへの投稿論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)