2013 Fiscal Year Annual Research Report
貧困とリスクを支える生存基盤の国際比較:沖縄のシングルマザーの事例を中心に
Project/Area Number |
23710298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 奈穂 京都大学, 東南アジア研究所, 連携研究員 (10600108)
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Keywords | シングルマザー / カンボジア / 沖縄 / 相互扶助 / 親族ネットワーク / 貧困 |
Research Abstract |
本研究はシングルマザーがいかに働き,いかに資金を得て,いかに子や老親をケアしているのかを明らかにすることを通して,所得貧困の回避とリスク対応が可能となる生存基盤のあり方を探究することを目的としている。また,経済成長を遂げた日本と変動の中にある東南アジアのシングルマザーを支える生存基盤のあり方を探究するための次の一段階として,本研究では経済的にも地理的にも日本と東南アジアの中間に位置し,社会文化的にも東南アジアに近い特色を持つ沖縄を事例として取り上げる。また,それらの研究から広義の「貧困」概念の理解に貢献する。 最終年度である本年度では,これまでの研究成果を著書『夫を失くした女性たち』としてまとめる作業を中心に行った。申請者がこれまで調査を実施してきたカンボジアではシングルマザーを親族のネットワークで支え,それは家族構成の柔軟な変更や子を他世帯へ移動させることにより実現していた。一方,沖縄の離島地域では,親族間の支え合いはもとより,シングルマザーを支える福祉制度がより効果的に彼女たちに行き届いていること,また親族を超えたより広い範囲で相互にケアをおこなう関係が観察された。そのような“シマ”でのつながりが表象化する1つの事例として,子の小学校入学や高校入学時の祝儀のやりとりがある。シマの中で広くやりとりされる「祝儀」の関係は,シマの中での人と人のつながりの実態のあらわれであり,入学に伴い必要となる費用を実質的に負担していた。そのような“シマ”の中での互いを支えあう関係が,シングルマザーの生存基盤を支える役割を担っているのである。 研究成果としてまとめている著書は,未だ出版段階に至っていないが,今後も執筆・改正を重ね研究成果として発表できるよう尽力していきたい。
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