2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・コンフリクト期イラクにおける国家建設の包括的研究
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23710301
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 講師 (80598706)
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Keywords | 国民和解 / 治安部門改革 / イラク / 国家建設 |
Research Abstract |
24年度は、①国民和解政策、②治安部門の改革、③経済という3つの問題の分析に力点を置いた。 ①各勢力が国民和解という政策をどのように設定し、それをいかに独自の権力闘争に利用しているのかを、各政党の戦後8年間の政策を包括的に整理することで、解明した。同時に、紛争を経て国民和解というアジェンダが設定されたことで、各政党の活動とその後の国家建設にいかなる影響を与えているのかという問題を分析した。さらに、選挙における国民和解政策の詳細を精査することで、各政党がイラク国民の範囲をどのように規定しようとしているのかを明らかにした。これを通して、国民和解政策がネーションビルディングに与える影響も分析した。 ②治安部門形成の研究では、これまでほとんど明らかになっていないイラク軍と警察機構の再建のプロセスを解明し、国軍と警察機構内部で露呈しつつある出身地域、社会階層、宗派、民族の差異に起因する対立の実態を明らかにし、それが治安部門の強化に与える影響を探った。また、これまでSSR(Security Sector Reform)論の前提となっていた中央集権的な暴力装置の一元化に反するイラクの実情について、部族によって構成される非公的治安機関の拡散に着目し、その実態を明らかにした。また、その非公的治安機関が警察機構や国軍といかなる対立/相互補完関係にあり、それが国家建設にどのような影響を与えているのかを解明した。 ③経済復興の研究では、政権党であるイスラーム主義政党が、いかにして石油資源を中心とする経済発展を政権の安定に利用しているか、そのメカニズムを解明した。具体的には、どの勢力がいかなるルートを通じて、どのように経済開発を支配しているのか、また、こうしたゲームが、国家建設にいかなる影響を与えているのかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初24年度の研究として予定していたのは、①国民和解と②治安部門改革の研究であったが、それに加え、25年度に実施を予定していた③経済の問題についての研究も実施し、それを終了した。 さらに、これらをまとめて単著『紛争と国家建設ーー戦後イラクの再建をめぐるポリティクス』を明石書店から上梓することができた。 以上を鑑み、研究は想定と計画をはるかに上回るペースで進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成25年度には、当初の計画で残っている最後の点、つまり、戦後イラクの国家建設の事例を、東南アジアのカンボジア、アフリカのソマリアをはじめとする複数の紛争経験国と比較・検証し、紛争と国家建設の理論化と分析枠組みの構築を目指す。 そのために、25年度の日本比較政治学会において、企画委員として「紛争と国家建設における軍・準軍事組織・治安機関の役割」というパネルを立ち上げ、シエラレオネ、レバノン、カンボジアとの比較研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1に、イラク国内紙のデータベースを用いた情報収集を行う。オンラインで入手不可能な新聞などの資料については、ファーレフ・ジャッバール所長(在レバノン、イラク戦略研究所)との連携で、国内の新聞、アーカイヴスへアクセスする。さらに、BBC Monito ring Serviceなどの国際メディアアーカイヴも利用する。研究費は、こうした資料の購入費用に不可欠である。 第2に、シエラレオネ、カンボジアなどの紛争経験国との比較検討を行うために、こうした地域で現地調査を行い、イラクの事例との比較分析のための研究会を開催する。研究費は、こうした聞き取り調査、および国内研究会の旅費に使用する。 第3に、平成25年6月にエジプトのカイロで開催されるイラク戦争10年を記念した国際シンポジウムに参加し、これまでの研究成果を報告する。その際の旅費に使用する。
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