2011 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の政治参加に関する研究:体制内の合法的な政治参加と政治社会の安定
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23710305
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加茂 具樹 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (30365499)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 政治参加 / 非民主主義国家の議会 / 代表制度 / 中国共産党 / 人民代表大会 / 中国人民政治協商会議 |
Research Abstract |
経済発展による社会の多元化は、一元的政治体制の多元化を誘導する可能性が高いといわれている。しかし中国では、急速な経済発展の下で社会は過去と比較して多元化したものの、共産党一党体制は堅持されてきた。それはなぜだろうか。本研究の目的は、中国の政治社会が約20年間という比較的長期にわたって安定してきた要因について、「非民主主義国家における政治参加」をキーワードにして検討しようとするものである。この問いに答えるために本研究は、現代中国の体制内の合法的な政治参加の実態に注目した。社会が表出する多様な選考(要求)が、中国の議会制度(人民代表大会制度)をつうじて集約され、調整され、そして政策となる過程について実証的な分析を試みた。具体的には、幾つかの地方の人民代表大会についての事例研究をおこなった。人民代表大会に提出された議案(要求)が決議や決定(政策)となる過程を明らかにする事例研究である。これに加えて本年度は、本研究を実施する上でのプラットフォームとなる国際的な研究ネットワークの構築に努めた。平成22年度末よりカリフォルニア大学バークレー校現代中国研究センター(CCS)訪問研究員として1年間訪問する機会を利用して、既存の国際的な人民代表大会研究のコミュニティーへのコミットを一層深めた。具体的には、米国滞在中、同コミュニティーにおいて中心的な存在であるCCS 前所長、カリフォルニア大学バークレー校政治学部に在籍するKevin O'Brien 教授、またウィスコンシン大学マディソン校政治学・公共政策学部に所属するMelanie Manion教授との研究交流を深めたほか、国際学会(AAS)での報告や「政治参加」をテーマとしたワークショップを主催し、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施する上でのプラットフォームとなる国際的な研究交流のネットワークを形成できた。カリフォルニア大学バークレー校政治学部に在籍するKevin O'Brien 教授、またウィスコンシン大学マディソン校政治学・公共政策学部に所属するMelanie Manion教授との研究交流を深めた。カリフォルニア大学バークレー校の現代中国研究センターでのセミナー報告や国際学会(AAS)での研究報告、このほかダラス(テキサス)にあるサザン・メソジスト大学において、「政治参加」をテーマとした日米の研究者をあつめたワークショップを主催することができた。また、社会が表出する多様な選考(要求)が中国の議会制度(人民代表大会制度)をつうじて集約され、調整され、そして政策となる過程を明らかにするために、人代に提出された議案(要求)が決議や決定(政策)となる過程(初年度実施計画にある「政治過程の分析」)に注目して分析をおこない、この成果を上記の国際学会(AAS)で報告した。しかし、実施計画に定めた「ネットワーク分析」をおこなうために必要なデータを十分に集めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に構築した欧米の研究コミュニティーを中心とした研究ネットワークを活用するとともに、中国、台湾、韓国、香港を中心とするアジアの研究コミュニティーとの連携を深める。本研究の活動の成果を広く国際的な研究コミュニティーのメンバー間で共有できるよう努める。平成24年度は、前年度に十分におこなう事ができなかったネットワーク分析に必要なデータの収集に努める。23年度に研究を深めることができた「政治過程の分析」の分析結果を利用しながら、より効率的なデータの収集をおこなう。また、平成25年度に人代制度を通じた政治参加の取組みについての歴史的分析を行うために、中国のいくつかの公文書館(档案館)での資料調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度はカリフォルニア大学バークレー校にて在外研究をしていたため中国へのアクセスは容易ではなく、データを収集するためのフィールド調査を十分にできなかった。平成24年度は日本に戻ることを見越し、同年度により集中した調査をおこなうために研究費の一部を執行しなかった。平成24年度は、欧米およびアジアとの研究コミュニティーとの連携を維持するために、東京に研究者を招聘するほか、ニューオリンズ(APSAでの報告)、上海、台北、ソウルでワークショップ研究費を使用する。また、データを収集するためのフィールド調査(中国)を徹底しておこなうために研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)