2012 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の政治参加に関する研究:体制内の合法的な政治参加と政治社会の安定
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23710305
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加茂 具樹 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (30365499)
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Keywords | 国際情報交換 / 多国籍 / 政治参加 / 権威主義国家の議会 / 民意機関 / 中国共産党 / 人民代表大会 / 中国人民政治協商会議 |
Research Abstract |
経済発展による社会の多元化は、一元的な政治体制の多元化を促す傾向があるといわれている。しかし中国では急速な経済発展の下で社会は過去と比較して多元化したものの、中国共産党の一党体制は堅持されてきた。それはなぜか。本研究の目的は、中国の政治社会が過去20年という比較的長期にわたって安定してきた要因について「非民主主義国家における政治参加」をキーワードにして検討しようとするものである。 この問いに答えるために本研究は、これまで中国共産党が設計した公式の政治参加のルートに注目した。具体的に人民代表大会制度である。この人民代表大会制度は、比較政治学の分野においては、Democratic Institution(民意機関)に整理分類できる。中国には、中国共産党が公式に設けた政治参加のいま一つのルートとして中国人民政治協商会議がある。この中国人民政治協商会議制度はDemocratic Institutionsの定義から外れるため、国際的な中国研究の学問空間では、ほとんど注目されてこなかった。そこで本年度の本研究は、こうした既存の研究の空白を埋めるべく、中国人民政治協商会議制度に焦点をあてて、人民代表大会制度の政治的機能の関連性をふまえて研究をおこなった。 取り組んできた研究成果を、適宜、学会で報告をおこない、得られたコメントをふまえて修正をおこないながら発展させた。報告した学会は、日本比較政治学会およびEuropean Association for Chinese Studies (EACS), Western Political Science Association(WPSA)である。また今年度の成果は『アジア経済』誌が企画した「特集:権威主義体制における議会と選挙の役割」に年度末に投稿(査読付き)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内をはじめ、海外の学会において研究報告をおこなうことができた。これにより、本研究の目的の一つである、中国の民意機関に関する研究者との研究ネットワークを拡大することができた(報告をおこなった主な学会は以下の通り。日本比較政治学会およびEuropean Association for Chinese Studies (EACS), Western Political Science Association(WPSA))。 なお昨年度の研究成果を取りまとめたものが “Representation and Local People’s Congresses in China: A Case Study of the Yangzhou Municipal People’s Congress” (co-authored with Hiroki Takeuchi), Journal of Chinese Political Science, Vol.18, Issue 1 (January 2013), p41-60. で刊行された。 本研究を実施してゆく過程で直面した問題点は以下の通り。近年になって急速に増してきた中国の民意機関に関する資料の公開の範囲・量に対応するための取り組みが遅れている。この点は当初の想定を超えるものである。次年度以降の課題とする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および平成24年度に実現できた欧米を中心とした研究コミュニティーとの研究ネットワークの構築に努める。同時に、これまでの研究交流の結果、中国の議会制度に関する研究の最先端は中国大陸、台湾、香港を中心としたアジアの中国研究のコミュニティーで展開している。平成25年度は、アジアの中国研究ネットワークへの一層のコミットメントを高めることにしたい。平成25年度前半は、國立政治大学(台湾)に長期出張をする関係から、台湾の研究資料へのアクセスを深めてゆく。 これまで、中国のDemocratic Institutionsは人民代表大会制度だけだと見なされてきた。最終年度をむかえた本研究は、中国人民政治協商会議制度をもふくめた、より立体的な視点で、中国のDemocratic Institutionsに対する分析を深めてゆく。そうすることで学術的な貢献を高めてゆくことにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度末時期に生じた経費の精算手続きが平成25年4月以降になるため、平成25年3月31日時点では翌年度に使用する研究費が生じているが、平成25年4月以降に行う精算に使用する予定である。 欧米だけでなくアジアを含めた国際的な中国研究のコミュニティーでの研究成果の発表をすすめてゆく。 近年になって急速に増してきた中国の民意機関に関する資料の公開の範囲・量に対応するための取り組みを行うため、幾つかの基本的な調査(資料の所在の確認および、分析手法の模索)おこなうために研究費を使用する。
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Research Products
(7 results)