2011 Fiscal Year Research-status Report
「アフリカから見た第二次世界大戦期の日本」研究の構築に向けた基礎的研究
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23710307
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
溝辺 泰雄 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80401446)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 日本アフリカ交渉史 / 第二次世界大戦 / 戦時中のメディア / 英語圏アフリカ(ガーナ・ケニア・ナイジェリア) / 戦時中のプロパガンダ / アフリカから見た日本 |
Research Abstract |
研究初年度となる2011年度は、史資料の収集及び専門家へのインタビューを研究活動の主軸に据え、(1)2011年8月30日~2011年9月23日には、ケニア国立公文書館(ナイロビ)・ガーナ国立公文書館PRAAD(アクラ本館・セコンディ分館・クマシ分館)において、(2)2011年12月には連合王国・大英図書館本館及び大英図書館付属新聞図書館(ロンドン)において、(3)2012年3月06日~2012年3月27日には、ケニア国立公文書館(ナイロビ)・PRAAD(アクラ本館・クマシ分館)・ガーナ国立軍事博物館(クマシ)において、文献及び聴き取り調査を実施した。なかでも、(1)の調査においては、PRAADのセコンディ分館に訪れる機会を得た。同分館アーキビストの協力もあり、西部地域政府文書(WRG)の中で、主に第二次世界大戦期の刑務所関連の史料を確認することができた。同時期のセコンディ中央刑務所には日本人抑留者が収監されていたことが、別の史料(PRAAD[ACCRA], CSOファイル)にて確認されているが、今回の調査においては、日本人抑留者に関する明確な情報は確認することができなかった。しかし、これにより、当該抑留者に関する史料はアクラを中心とする、別の文書館に所蔵されていることが確認できた。さらに、(3)の調査においては、クマシにあるガーナ国立国軍博物館(Ghana Armed Forces Museum)に訪問し、同館館長にインタビューをする機会を得た。その場において、同館の設立に至る経緯や収蔵品の内容などに関する情報を提供頂き、第二次世界大戦期にインドビルマ戦線で日本軍から収集した武器や国旗などの「戦利品」の品目と数を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的は、第二次世界大戦(以下、第二次大戦とする)期の英領西及び東アフリカ植民地(主にガーナ、ナイジェリア、ケニア)において、「連合国」の一員として同大戦に巻き込まれた現地の人々が、「枢軸国」の一国として敵対することとなった「日本」に対する認識をいかに変化させていったかを、a.新聞や公文書及び宣伝文などの文字史料に加え、b.現地に現存する「第二次大戦期の日本」に関連する物品・地名などの調査・分析を通して跡づけることにある。研究初年度にあたる2011年度は、a.の文字史料の収集に関して、主たる調査地であるガーナ共和国において同国公文書館のアクラ本館、クマシ分館に加えてセコンディ分館での調査も実現し、研究対象年代である1930年代から40年代における同国(当時は英領黄金海岸)の政府関係資料における第二次世界大戦時の情報局関連文書の全体像を把握することができた。さらに、ケニア共和国公文書館における調査においては、戦時中の日系企業関連の不動産・動産の差し押さえ手続きに関する文書群を参照し、特に具体的な情報が記載された極秘文書ファイル2綴(CS/2/7/30: Assumption of Japanese interest in Kenya Archives of Japanese consulate, 1941-53及びAE/3/812: Disposal of Surplus Stores. Japanese reparations secret, 1947)を複写にて入手することができた。さらに、終戦後まもなく、戦前日本との取引関係のあった現地系商社による植民地当局への取引再開願なども収集することができた。これらは、上記研究目的b.にとって、極めて示唆に富む史料であり、第二次世界大戦期における英領東アフリカと日本の関係史の解明に重要な情報を得ることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクト最終年度となる2012年度は、前年度に収集した文献及びインタビューによる史資料に基づき、アウトプット(口頭及び文書による研究発表)を活動の軸に据える。具体的には(1)国内外の研究集会・ワークショップ等における口頭による研究報告、(2)邦語・英語による研究報告書(論文)の発表、(3)海外の研究者との共働に向けた、情報・意見交換の実施、を中心にプロジェクトを進行させる。(1)については、2012年5月初旬にカナダで開催されたカナダアフリカ学会年次大会(Annual Conference of Canadian Association of African Studies)に於いて、第二次世界大戦期の英領黄金海岸における現地植民地政府当局による現地新聞(The Ashanrti Pioneer紙)への検閲の実態と新聞社側の対応に関する研究報告を実施した。同報告は、経営者・編集長とのやりとりを記録した文書に基づき、同大戦期における当局と現地メディアのある種の「互恵的関係」を浮き彫りにしたものであり、今回の報告時に寄せられたコメントを参考に一部修正した原稿は、海外の研究機関の研究誌に掲載される予定である。さらに、本年7月にナイジェリアのラゴスで開催される国際研究集会(TOFAC2012)にも既に発表申請が受理されており、ここでは第二次大戦期の日本メディアのアフリカ報道に関する研究報告を実施する予定にしている。加えて、上記(3)にも記した通り、今年度は、海外(アフリカ)の研究機関で日本アフリカ交渉史の研究をおこなっている現地の研究者との研究交流にも注力する。具体的には南アフリカやナイジェリアの研究者との研究上の情報交換と史資料の検討会などの実施を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上欄「今後の研究の推進方策」に記した通り、2012年度は(1)国内外の研究集会・ワークショップ等への参加、(2)研究報告書(論文)の執筆・出版、及び(3)海外(アフリカ)の研究者との情報交換・検討会の実施を軸に、研究活動を実施する予定である。そのため、2012年度の研究費の使用は、【海外旅費(5月: カナダ, 7月: ナイジェリア・ガーナ, 9月: ケニア・南アフリカ, 12月: ガーナ・ナイジェリア[渡航時期・地は予定])】を中心に、【物品費(印刷費など)】及び【謝金(英文校正費など)】に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)