2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710313
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
増野 高司 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 外来研究員 (40569159)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 焼畑 / 東南アジア / 少数民族 / ヤオ族 / ミエン / タイ / ベトナム / ラオス |
Research Abstract |
2011年度には,タイ北部の山村を中心に調査を実施した.具体的には,2011年6月,10月,2012年1月にタイ北部のミエン族が暮らす農村を訪問し,陸稲栽培を中心に,焼畑の衰退に着目し,その土地利用様式の変化について調査をおこなった. その研究成果について,2011年度には6編の学術論文(うち4編が査読付き)を執筆するとともに,13回の学会発表をおこなった.なかでも,2011年7月にバンコクで開催されたタイ研究に関する国際会議(The 11th International Conference on Thai Studies)では,口頭での発表(発表タイトル:Changes in the upland agriculture of a Mien hillside village, Northern Thailand.)をおこなった.この発表では,タイ北部の山村を事例として,焼畑の衰退過程を報告するとともに,焼畑衰退後に新たな経済活動として,タイ王室の「王室プロジェクト」によりゴムノキの植林が進められていること,そしてゴム樹脂の採集および販売が開始されていることを報告した. また,タイ北部のミエン族が主食とする陸稲の栽培に関する論文を出版した(増野高司(2011)「タイ北部における陸稲の耕作地をめぐる在来知-ミエン族と陸稲との関係-」『生き物文化誌学会 ビオストーリー』15:84-98.).この論文では,陸稲の耕作地の選択に関わる在来知識の変化について,焼畑から常畑へ農法が変化するなかで,ミエンの人びとが新たな農業技術を取り込みつつ陸稲の栽培を続けていることを指摘した. タイ北部以外では,2011年10月にベトナム北部のミエン族が暮らす山村等を訪問し,予備調査を実施し,2012年度の本調査に向けた準備を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイ北部の研究については,その成果の一部を国際学会で発表するとともに,学術論文として報告を開始している.また,焼畑の衰退過程について,その土地利用の変化を中心にデータの収集および解析を進めるとともに,焼畑衰退後の経済活動に対する政府やNGOによる開発援助の役割についての予備調査を実施した.タイ北部での研究は順調に進行していると考えている. タイ北部以外の地域について,当初の計画では,2011年度には,ラオスでの調査に向けた準備を開始する予定だったが,ベトナムの植物資源センター(Plant Resource Center)の協力が得られることになったことから,ラオスでの調査に先んじ,ベトナム北部での調査準備を開始することにした.ベトナム北部にもミエン族が数多く分布しており,ラオスで予定していたのと同様の調査を実施することが可能である.調査を開始する国を変更したが,ベトナムでの研究も順調に進行していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
タイ北部地域での研究については,土地利用の変化に関するGISデータをとりまとめ,学術論文として報告してゆきたいと考えている.また,タイ北部では,焼畑衰退後の経済活動として,ゴムノキやコーヒーノキの植林が進められるとともに,一部では,その樹脂や果実の採集が開始されている.2012年度には,ゴムノキやコーヒーノキの利用に対する政府やNGOによる開発援助の役割についての調査を実施し,焼畑衰退後の住民の生計維持に向けた取り組みを明らかにしたいと考えている. ベトナム北部では,2011年度の予備調査に続き,ベトナム植物資源センターの協力のもとで,調査村を設定するとともに,世帯レベルでの土地利用および生計活動に関する聞き取り調査を開始する予定である. 研究成果については,タイで開催される国際会議および国内の学会(日本熱帯農業学会,日本地理学会,生き物文化誌学会)で発表するとともに,学術論文として順次公開してゆく予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タイ北部での現地調査を2回,ベトナム北部での現地調査を1回予定しており,これに必要な旅費および調査費を計上した.また,タイで開催される国際会議において本研究課題の研究成果を報告する予定であることから,この会議への参加に必要な経費を計上した. 物品の購入について,現地で得られたデータ入力を迅速におこなうため,ノートパソコンを1台購入する予定である.
|
Research Products
(19 results)