2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710317
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 文香 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (10367667)
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Keywords | 国際研究者交流 / アメリカ / 社会学 / ジェンダー / フェミニズム / 軍隊 / 暴力 / 自衛隊 |
Research Abstract |
2012年度は2011年度に引き続き、Harvard-Yenching Instituteの客員研究員として6月までアメリカに滞在し、ハーバード大学を拠点として研究活動を行った。4月1日から4日には、サンディエゴで開催されたInternational Studies Association(ISA)の年次大会に参加し、Feminist Security Studiesのセッションに集う各国の研究者らと軍隊のジェンダー政策についての意見交換を行うことができた。 日本に帰国後は、アメリカで収集してきた資料を読みこみつつ、文献研究を通じた方法論的な検討につとめ、ISAでのフェミニスト国際関係論の方法論に関するセッションをもとに編まれた論文集、 Brooke A. Ackerly, Maria Stern, and Jacqui True eds., Feminist Methodologies for International Relations (Cambridge University Press, 2006)の書評を『国際ジェンダー学会誌』に掲載した。また、2011年度、Harvard-Yenching Instituteで行った研究発表をもとに執筆した論文、“A Camouflaged Military: Japan's Self-Defense Forces and Globalized Gender Mainstreaming”が The Asia-Pacific Journal(APJ)に掲載された。なお、この論文はAPJにより2013年度に刊行されるコース・リーダーにも収録されることが決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は、女性自衛官教育隊設立前の米軍視察に関する資料をとりいれて、自衛隊の女性包摂のプロセスを「カモフラージュ」という枠組みのもとに分析した論文を、The Asia-Pacific Journal(APJ)に掲載することができた。この論文はAPJによりexemplary articleに選ばれ、2013年度に刊行されるコース・リーダーにも収録されることが決まった。 アメリカ滞在中は、軍隊のジェンダー研究を行っている各国の研究者とのネットワークを広げることができた。特に女性の戦闘職開放をめぐる米英豪の政策転換についての意見交換を通じて、ジェンダー主流化を背景とした自衛隊の職域拡大に関する動向を考察するにあたって有意義な示唆を得ることができた。 アメリカの教育・訓練のジェンダー統合および性暴力対策については、国防総省性暴力防止・対策局(SAPRO)の公式報告や先行研究の読みこみを進めるとともに、海軍戦争大学でジェンダー教育を行っているMary Raum教授、およびハーバードのケネディ・スクールに在籍中だった2名の女性軍人から、話を聞く機会に恵まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ調査により得られた教育・訓練のジェンダー統合および軍隊での性暴力対策に関する資料を引き続き精査する。オバマ政権は「女性・平和・安全保障」の国内行動計画を策定した後、女性の戦闘職開放を発表したが、米軍では年間推計1.9万件の性暴力事件が発生しているとされる。一方、日本政府も国内行動計画の策定に着手することが発表されており、防衛研究所を中心に各国女性軍人の職域配置に関する事例を集めて検討に入るといった動きもある。よって、軍事組織におけるこうした変化を構成員がどのように受け止めているのかを探っていくことが重要と判断し、2013年6月より男性自衛官を中心とした聞きとり調査を開始することにした。また、アメリカ調査において、日本以上に積極的に米陸軍女性部隊に女性を送りこんでいた国が韓国であったことが判明したため、男子徴兵制を続ける韓国軍における動向についても適宜把握につとめ、比較・参照していくこととする。 なお、本研究の中間報告として、アメリカで出席した軍隊の女性に関する会議についての資料報告を『国際ジェンダー学会誌』に、戦争・軍隊をジェンダーの視点から考察する意義についての解説論文を『戦争研究の新視角』(勉誠出版)に掲載予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は6月より開始する男性自衛官への聞きとり調査のための国内旅費、また、3月26日から29日までトロントで開催されるISA年次大会に参加し、その後アメリカに7日程度滞在し補足的な資料収集を行うための海外旅費を中心に研究費を使用する。2012年度には海外調査の滞在期間が計画より短期間となったため91,776円の余剰額が生じたが、これは2013年度の海外調査費用の一部として用いる。
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