2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ占領下の日本における「女性解放」政策と性・生殖のコントロール
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23710322
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
豊田 真穂 関西大学, 文学部, 准教授 (20434821)
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Keywords | 日本占領 / アメリカ / ジェンダー / 女性解放 / 社会政策 / リプロダクティブ・ライツ / 性と生殖の管理 / 家族 |
Research Abstract |
本研究の目的は、性や生殖のコントロールに焦点を当てることで、アメリカ占領下の日本における「女性解放」政策の歴史的意義を再評価することにある。今年度は、特に優生保護法の不妊手術/断種を事例にして、国家が直接的に性と生殖をコントロールできるように定めた経緯を明らかにした。戦後の優生保護法の不妊手術/断種に関する規定は、1940年の国民優生法における「優生手術」の規定を拡大・強化したものである。そして国民優生法案は、ナチ断種法を参考にしつつも日本国内におけるハンセン病者に対する手術の実績も参照している。本研究は、このハンセン病者に対する手術が、アメリカ国内で1899年から実施されていたヴァセクトミーと呼ばれる手術法を導入して行われていたことを実証的に明らかにした。そして戦後、優生保護法に手術/断種の規定が盛り込まれると、連合軍最高司令官総司令部(SCAP)のスタッフの中には「ナチ民族理論と実践の再生であるから反対すべきだ」という意見があった。それにもかかわらず結局SCAPは、優生思想を基盤としたこの法案の基本的な枠組みに触れることなくその方向性を黙認した。本研究は、こうしたSCAPの方針を、占領期が日米両国の戦前/戦時下から続く社会政策の流れの接点であることを重視して検討した。その結果、日本に於ける優生思想の継続と拡大・強化には、少なからず米国の影響があったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年7月20日より産休・育休取得のため、現在は研究を中断しており、研究は遅れている。平成26年度末より再開の予定なので、1年半ほどの遅れが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
育休からの復帰後、平成26年度末より研究再開をめざす。本研究は日本のバースコントロール運動をめぐる政策を、アメリカ国内におけるバースコントロール運動史との連続性のなかで検討し、占領下の「女性解放」政策の歴史的意義を再評価することを目的としている。そこで、GHQ/SCAPとして直接的に日本の統治に関わったわけではないが、日本のバースコントロール政策に大きな影響を与えたアメリカ人運動家に注目し、日本の運動との関係を探りたい。具体的には、ラドクリフ大学シュレジンジャー・アメリカ女性史料館所蔵資料の "The Papers of Mary Ware Dennett and the Voluntary Parenthood League"や、スミス大学図書館所蔵の"Papers of Margaret Sanger"などを調査することによって、家族計画や性教育、性と生殖に関する論争や運動の内実を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
産休・育休取得による研究の一時中断をしたため、研究計画提出時よりも研究が遅れている。 平成26年度は、関西大学図書館が新規購入した「女性研究資料集」の第1部第3シリーズのB「家族計画:性教育・性と生殖に関する自由と権利」(Sexuality, Sex Education,and Reproductive Rghts)を調査研究する。 平成27年度は、引き続き上記の資料と合わせて、関西大学図書館所蔵のマイクロフィルム「スミス大学図書館所蔵のマーガレット・サンガー文書(Papers of Margaret Sanger)」を調査する。 両年度において、中断をはさんで行った研究を統合して、バースコントロールをめぐる政策からみえてくる日米の家族イデオロギーを抽出し、論文発表する。また、英語での論文発表も含む予定であるため、校閲や編集等といった研究協力者からの支援も受ける予定である。
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Research Products
(3 results)