2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ占領下の日本における「女性解放」政策と性・生殖のコントロール
Project/Area Number |
23710322
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
豊田 真穂 関西大学, 文学部, 准教授 (20434821)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
|
Keywords | アメリカの日本占領 / ジェンダー / リプロダクティブライツ / バースコントロール / 優生思想 / 生殖/人口の管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は育休あけ1年目だったため、研究の再開が12月中旬であり顕著な研究実績をあげることはできなかった。しかしながら、研究を再開するにあたってこれまでの研究をまとめる意味をこめて、関西アメリカ史研究会年次大会で「誰のためのバースコントロールかークラレンス・ギャンブルの優生思想と戦後日本における生殖/人口の管理」というタイトルで報告を行った。日本政府が「人口抑制」をかかげてバースコントロールを政策に掲げるきっかけとなった1955年の国際家族計画連盟会議の東京開催に、重要なきっかけを与えた人物としてギャンブルの名前は知られているものの、ギャンブルがどのような人物でどのように戦後日本のバースコントロール運動にかかわったのかは、ほとんど知られてこなかった。本報告では、日本のバースコントロール運動を、アメリカ国内における運動との連続性のなかでとらえ、この問題にアプローチした。ギャンブルを通してこの問題をみると、アメリカ白人エリート層のような「適者」が安心して暮らせるように、世界規模での「逆淘汰」を防ぐためのバースコントロール推進という側面が明らかになった。そして、ギャンブルは、貧しく教育程度の低い家族が子どもを「軽率に」産まないようにするためにバースコントロールをすすめたという意味で、優生学的な家族像を日本にもたらしたと言える。なお、同テーマで論文(『変革の鍵としてのジェンダー』という編著書のうちの1章)を執筆し、現在、校正中である(2015年夏に刊行予定)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2013年度は産休・育休を取得したため研究を一時中断しており、2014年度は職場復帰したものの研究再開は12月まで待ったため、交付申請書での研究計画にくらべると遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、占領下の人口政策とバースコントロールの問題を整理し直し、これまで行ってきた占領軍スタッフ以外のアメリカ人で戦後日本のバースコントロール運動や人口問題に深く関与した人びとの動きとの関連を探り、占領期を日米の互いに異なるジェンダー観がせめぎ合う場として捉え、日本のバースコントロールをめぐる政策を、アメリカ国内におけるバースコントロール運動史との連続性のなかで理解する研究をすすめたい。また、できるだけ早くこれまでの研究成果をまとめ、占領期の「女性解放」政策の歴史的意義を検討する著書『アメリカ占領下日本の「女性解放」政策と性と生殖のコントロール』(仮)を完成させたい。
|
Causes of Carryover |
本年度は産休/育休あけ1年目だったため、研究再開を12月中旬とした。そのため研究がほとんど進まないまま年度末を迎えてしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はこれまでの研究をまとめるために資料整理等のアルバイト、また専門的知識の提供等をしてもらうことによって、すみやかに研究をすすめ、研究成果をまとめる作業に入りたい。
|
Research Products
(2 results)