2011 Fiscal Year Research-status Report
女性労働者の就業行動に関する実証分析-職場の雰囲気が就業に与える影響-
Project/Area Number |
23710323
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Research Institution | Kokusai Junior College |
Principal Investigator |
寺村 絵里子 国際短期大学, その他部局等, 講師 (70598870)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ジェンダー / 経済・労働 / 女性労働 |
Research Abstract |
本研究は、企業等において「職場の雰囲気」と称される暗黙の雰囲気により、どのような属性を持つ者が就業継続が難しいと感じていたか、また実際の就業行動に変化をもたらしたのか、の2点について量的分析及び質的分析を通じ検証するものである。ここで着目するのは、実際の職場環境に関する制度の有無ではなく、制度の有無に関わらず諸制度を使いにくい、仕事を続けにくいという女性労働者が感じた「職場の雰囲気」という変数である。 このうち、平成23年度は「職場の雰囲気」に関する変数を有するマイクロデータの貸与を受け、量的分析を行った。このデータでは女性の結婚時・出産時の「職場の雰囲気」を尋ねた設問がある。具体的には女性労働者が感じた「職場の雰囲気」の有無により実際の女性労働者の就業行動に違いがみられるかどうかを検証した。分析上の問題がいくつかあり、今後再検証が必要であるが、現在のところ得られた結果は以下の2点である。1)女性が初職を継続するための要因として、「両立支援・時間のとりやすさ」に関する合成変数は、女性の初職継続にプラスの影響を与えている。一方、「仕事の内容」「処遇の公正さ・女性活用」に関する合成変数については効果が確認されなかった。2)女性の離職においては、結婚時の「職場の雰囲気」は現在の就業状態に対して影響がなく、出産時は弱いながらも負の影響を持つ。一方、就業継続においては「職場の雰囲気」は結婚・出産時ともにプラスの効果を持ち、特に出産時でその影響が大きい。 また、平成24年度に実施するインタビュー調査の準備として、首都圏(1都3県)の労政事務所及び女性センター93か所に依頼状を送付し、調査者の選定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は「職場の雰囲気」に関する変数を有するマイクロデータの貸与を受け、量的分析を行った。具体的には「職場の雰囲気」により実際の女性労働者の就業行動に違いがみられるかどうかを検証した。主に得られた結果は以下の2点である。1)女性が初職を継続するための要因として、「両立支援・時間のとりやすさ」に関する合成変数は、女性の初職継続にプラスの影響を与えている。一方、「仕事の内容」「処遇の公正さ・女性活用」に関する合成変数については効果が確認されなかった。2)女性の離職においては「職場の雰囲気」は結婚時には影響がなく、出産時に弱いながらも負の影響を持つ。女性がその後再就職しているものと考えられる。一方、就業継続においては「職場の雰囲気」は結婚・出産時ともにプラスの効果を持ち、特に出産時でその影響が大きい。 上記の結果については、平成23年度に学会発表2件を行い、多くのコメントをいただいた。今後投稿を予定している。また、平成24年度に実施するインタビュー調査の準備として、首都圏(1都3県)の労政事務所及び女性センター93か所に依頼状を送付し、調査者の選定を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に実施するインタビュー調査の準備として、首都圏(1都3県)の労政事務所及び女性センター93か所に依頼状を送付し、うち27か所の協力を得た。その他、調査会社も併用し、調査者の選定を進めている。調査対象者はほぼ選定を終了しており、5-7月にかけてインタビュー調査を実施する。夏には査読付き雑誌に投稿を予定している。 また、平成23年度に行った量的分析の原稿をまとめ、投稿を予定している。また、この際に用いたデータがクロスセクションデータであることによるデータ上の限界から、現在別のパネルデータの貸与を受けるべく準備中である。パネルデータ分析についても、平成24年度中に投稿を予定している。 これらの成果を通じて、研究目的を達成したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は首都圏(1都3県)の女性を対象としたインタビュー調査を予定している。すでにほぼ人選は終了しており、25名程度を対象にインタビューを行う予定である。 次年度の研究費の使用計画としては、前年度の繰越金約50,000円とあわせて次の通り使用を予定している。インタビュー対象者選定(業者依頼文)代金約100,000円、インタビューのテープ起こし約200,000円、謝金(振込対応)約200,000円、海外出張(American Economic Association)約250,000円、書籍代約100,000円、研究成果報告書作成代約50,000円等である。 使用計画はほぼ研究計画に沿った予算であり、概ね問題はないと考えている。また、謝礼金の取り扱いについては、学内の規定に則った基準とし、トラブル等防止のために振込対応としている。
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