2011 Fiscal Year Research-status Report
男性稼ぎ主型福祉システム下の女性の仕事―家庭の調整機能に関する国際比較
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23710324
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
宮崎 理枝 大月短期大学, その他部局等, 准教授 (20435283)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | イタリア / ワークーファミリーライフ バランス / チャイルドケア |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本とイタリアにおける女性の仕事と家庭の両立の状況と、その形態の特徴を、比較考察し、明らかにすることである。これに基づき、平成23年度は、チャイルドケアによって生じる時間的負荷が女性の家庭と仕事の両立に与える影響を確認するために、生活時間の編成と就業形態の状況について分析した。 その結果、日本とイタリアは、ケアに対する家族責任(すなわち女性にかかる負荷)が強く、逆に稼得責任は男性により強いというような、同じ家族主義的でありかつ男性稼ぎ主型の福祉国家として認識されていたにもかかわらず、以下の点において、両者の違いが明確になった。第一に、特に日本において、子を持つ等のケア責任の高まりが、女性の家庭内の無償の家事・ケア労働時間に極度に傾斜して反映される点。またそれにもかかわらず、女性の、有償労働への参加時間は、イタリアと比較すると、明らかに長い点である。このことは、日本には制度的な男性稼ぎ主志向の(顕著な)強さが指摘されるにもかかわらず、パートタイムといった就業形態に代表される短時間労働を通じて、家族を持つ女性の労働市場での有償労働への参加も同時に行っているということである。 この結果を踏まえ、本研究では、さらに、家庭内と労働市場における労働時間のジェンダー非対称性の変容過程について考察した。すなわち経済停滞期となった1990年から2010年までの期間に、10歳以下の子を持つ母親の労働市場参加と短時間労働(週35時間以下)への参加がいかに変化していったのかを考察した。その結果は分析中であるが、このことによって、仕事と家庭の編成という点では、日本はイタリアよりもイギリスなどの女性のパートタイム労働と男性の長時間労働さらに自由主義的な社会政策指向の組み合わせとより類似性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画に基づき、 ケア政策や女性(母親の)ケアや家事へのかかわりについて分析を進めた結果、これらに対する女性(母親の)の就業形態やその選択の重要性と、そこでの地域的な性質の多様性が新たに明らかになった。「やや遅れている」とした理由は、当初の研究計画通りの現在の日伊の事例に関する比較研究のみにとどまらないことで、それを超えて示唆的な研究成果が生み出される可能性が見えたからであり、それに従事したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、新たに発見された課題に引き続き取り組むことで、日本の事例に関してもより詳細な分析が可能になると見込まれる。本年度はこれと併せて、当初の研究計画通り、日伊に関するチャイルドケアの在り方についての研究を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の達成度について挙げた理由から、チャイルドケアに関するイタリア現地でのヒアリング調査が、次年度に持ち越された。当初の研究計画通りの内容と研究費の配分でこれを実施するとともに、資料収集を行う。これら2点が、主要な研究費の支出先となる。
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