2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720004
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井上 彰 群馬大学, 社会情報学部, 講師 (80535097)
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Keywords | 政治哲学 / 倫理学 |
Research Abstract |
平成24年度は、デモクラシーの現実主義的理念について、われわれの不完全性とどう折り合うのかという論点をふまえつつ、デモクラシーの理論的基礎を多角的に分析・検討した。まず、デモクラシーの現実主義的理念を検討するにあたって、そもそも「現実主義的理念」の規範性がいかにして可能かをめぐる政治哲学的考察が不可欠であるとの観点から、2012年6月にスイスのチューリッヒ大学で開かれた、マディソン・パワーズおよびルース・フェイデンの現実主義的な社会正義論をめぐるワークショップにて、「穏当な本質主義は真に穏当か?」と題する研究報告を行った。その報告は査読を通じて、"Is Moderate Essentialism Truly Moderate?" Public Health Ethics, Vol. 6, No. 1 (2013), pp. 21-27.に掲載されるに至った。 また実際のデモクラシーが平等を基礎に、いかなる価値を有するのかについて本格的な検討を行ったロナルド・ドゥオーキンの平等主義的正義論を批判的に考察し、その研究成果を、「解釈・尊厳・平等-ロナルド・ドゥオーキンの『ハリネズミの正義』をめぐって-」『思想』第1064号、2012年、139-155頁、として発表した。同様に、デモクラシーの立憲主義的構想がリベラルな正義論の枠内に収まることを説得的に示したジョン・ロールズの議論に関して、その詳細な検討を行い、ロールズ的正義論枠組みの潜在的可能性について明らかにした。その研究成果は、「ロールズ『正義論』の再検討-第3部を中心に-」『社会科学研究』(東京大学)第64巻第3号、2013年、7-28頁、として公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的、すなわち、デモクラシーの現実主義的理念について、われわれの不完全性とどう折り合うのかという論点をふまえつつ、デモクラシーを多角的に分析・検討し、その成果を内外の学会や学術誌、そして学術性の高い商業誌にて報告・発表することができた。とくに、海外の学会(ワークショップ)での研究報告を、最終的に定評ある国際誌Public Health Ethicsに査読付き論文として掲載できたことは、非常に大きな成果であった。実際のところ、平成23年度にて行えなかった国際学会での報告が、24年度に実現したのみならず、年度内のうちに国際誌での論文掲載にこぎ着けたことから、23年度にできなかったことを挽回する成果をあげることができたといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では、23年度および24年度の研究を総合するかたちで、間接デモクラシーの規範性に関する分析を進め、そのうえで民意と投票がいかなる規範的重要性をもつのかについて明らかにする。民意については、熟議型世論調査で注目される熟議デモクラシーの理論を検討するかたちで、そのあり方、あるべき姿を提示すべく批判的に考察する。投票については、「なぜ投票が重要なのか」という本質的問いに応答しうる議論を提示すべく、義務投票制に関する政治哲学的検討を進め、日本での義務投票制に関する混乱した言説を精査する。 具体的には、これまでと同様、国内外の学会での発表や学会誌、そして学術性の高い商業誌に成果を発表してゆくの。また、それらをまとめて著書として公刊したり、新聞等の非学術的な媒体を使っての成果発信にもつとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【消耗品費】平成25年度の研究に必要な資料は高額な洋書が中心であり、かつそのほとんどを保有しておらず、また、新勤務先(立命館大学)の図書館でも所蔵されていないものも多いため、1冊10千円として、図書を30冊購入することを見込んで、消耗品費を300千円計上する。 【旅費】平成25年度は、国内で学会報告を行う際にかかる旅費(交通費と宿泊費)として100千円計上する。また、国際学会での報告のための外国旅費についても、180千円計上する。 【謝金】平成25年度の研究では、研究代表者にとって専門外の実証研究に関する専門的知識が求められることから、「専門的知識の提供」の予算を100千円計上する。また、国際誌への投稿のために、英文校正を依頼することから、その予算(校閲謝金)を100千円計上する。 なお、平成24年度では意図せずして当初よりも洋書の購入が抑えられたがために、それにより生じた差額分は、国際学会での報告のための外国旅費に充当されている。
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Research Products
(4 results)