2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランクフルト学派研究:アドルノの影響作用史を基軸として
Project/Area Number |
23720010
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入谷 秀一 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (00580656)
|
Keywords | アドルノ / フランクフルト学派 / 承認論 / 犠牲者 / 物語 / 苦悩 / ナラティブ |
Research Abstract |
2013年度はまず、前年度の実施報告書で予告していた通り、7月にフランクフルト社会研究所が主催したA・コショーケ教授による連続講演「物語る者としてのヘーゲル――ヨーロッパ近代のナラティブな体制」に参加した。また同年9月に神戸大学で開催された「芸術批評塾第三十二回例会」では「震える理性――アドルノはカントから何を学んだか」と題して、さらに同年10月にも同大学で開催された「芸術批評塾第三十三回例会」で「アドルノとフロイト――昇華されざるものの位置を巡って」と題して、それぞれ口頭発表を行った。さらに翌年2014年3月には、大阪大学未来戦略機構編集の学術雑誌『未来共生学』第1号に論文「犠牲者の/についての語り――物語論のための覚え書」が掲載された。これはO・リンデマン、K・ギュンターというフランクフルト学派の若手哲学者の最近の研究をふまえた論考である。 研究期間全体でいうなら、何といっても大著『かたちある生 アドルノと批判理論のビオ・グラフィー』(大阪大学出版会、2013年、412頁)を公刊できたのが最大の成果である。これはアドルノ思想の誕生の経緯、そしてそれを様々な形で継承した現代フランクフルト学派の思想動向を総括するという、哲学史的に見ても極めて意義深い実証研究であると同時に、制度としての物語論という新たな哲学地平を切り開く、画期的な著作となった。また上記で触れた「犠牲者の/についての語り――物語論のための覚え書」では、語り尽くせぬものについていかに正しく語るかという課題が、〈犠牲者的な語りの日常化〉という現代的な切り口から論じられており、『かたちある生 アドルノと批判理論のビオ・グラフィー』が開示した物語論の試みを、さらに前進させるものとなった。
|