2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720016
|
Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
金杉 武司 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (00407660)
|
Keywords | 心の哲学 / 自己知 / 合理性 / コミットメント / 技能知 / 不合理性 / 自己欺瞞 / 意志の弱さ |
Research Abstract |
本研究の目的は、「合理性説」「コミットメント説」などの新たな自己知論によって光が当てられた自己知の合理的側面や実践的側面に特に焦点を当て、これらの新たな試みの妥当性を考察することである。 初年度には、「合理性説」と「コミットメント説」を明確化し、命題的態度の直接的な自己帰属が、主体の合理的能力と実践的能力を具現する技能知によって支えられているということを明らかにした。この研究の成果は、論文「自己知・合理性・コミットメント―英語圏の心の哲学における自己知論の現在―」(『現象学年報』27)において発表された。 最終年度は第一に、初年度の研究で明らかになった自己知の合理的側面や実践的側面の理解に基づいて、初年度に引き続き、不合理な心のあり方の一例である自己欺瞞と自己知および自己の関係について考察した。具体的には、自己欺瞞的信念を所有する主体には、自己知が欠如しているがゆえに自己の分裂が生じているということ、それゆえ、自己欺瞞を「自らを欺くこと」として理解する伝統的枠組みでは、自己欺瞞を文字通り「自己欺瞞」として理解できなくなるという「パラドクス」が生じるということ、しかし、自己概念が多面的であることを理解すれば伝統的理解の下で部分的にパラドクスを回避できるということが明らかになった。この研究の成果は、論文「自己欺瞞のパラドクスと自己概念の多面性」(『科学哲学』45-2)において発表された。 第二に、同じく不合理な心のあり方の一例である意志の弱さについて考察した。具体的には、意志の弱さが示される意志の弱い行為をあくまでも自由な意図的行為として理解するためには、行為の動機づけは一般に、実践的推論の合理性によって説明されるべきであるということが明らかになった。この研究の成果は、論文「行為の反因果説の可能性―意志の弱さの問題と行為の合理的説明―」(『哲学』63)において発表された。
|
Research Products
(6 results)