2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720027
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
林寺 正俊 国際仏教学大学院大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60449361)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 仏教学 / 古写経 / 『三法度論』 / 『四阿含暮抄解』 / 徳品 / ヴァスバドラ |
Research Abstract |
本研究は、近年の古写一切経調査により従来の諸版本とは異なることが判明し、しかもより本来的な形態を留めている可能性が高いと推定される新出の古写経善本を用いることによって、インド仏教の有力な部派でありながらその全容があまりよく知られていない犢子部(とくしぶ)の伝えた『三法度論』の本文テキストを確定するとともに、異訳の『四阿含暮抄解』と対比しながら内容を正確に読解することによって、本書に説かれる教理ならびに犢子部の思想を明らかにすることを目的としている。 本書は、インド語原典もチベット訳もなく、二種の古い漢訳でのみ伝わり、内容的に難解な教義学的議論も含んでいる。かかる本書の性質に鑑みて、当該課題研究期間の初年度に当たる平成23年度は、全3章から成る『三法度論』のうちの第1章「徳品」に焦点を当てて、以下の作業を行なった。(1)従来の諸版本では明瞭に区別されていない、ヴァスバドラ自身の手になる経とそれに対する注釈文とを、古写経に基づいて峻別し、また諸本の校異をとって、「徳品」のテキストを確定した。(2)テキストの確定作業と並行して、「徳品」に登場する仏教術語の原語を可能な限り推定しながら、また『四阿含暮抄解』の対応部分を参照しながら、「徳品」の読解を進めた。(3)「徳品」に説かれる、施(daana)、戒(siila)、修(bhaavanaa)などの様々な教理について、他部派の文献における扱い方と比較検討することにより、その特色を明らかにしようと試みた。ただし、まだ充分な解明には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は『三法度論』の第1章「徳品」に焦点を当てるとした当初の計画通りに進んでいる。ただし、「徳品」に説かれる教理の特色については、検討を試みてはいるものの、まだ充分な解明には至っていない。この点については、他の章の読解の進展とともに進む可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに進める。すなわち、第2年目は『三法度論』の第2章「悪品」について、第3年目は第3章「依品」について、(1)古写経に拠りながらテキストを確定し、(2) 異訳の『四阿含暮抄解』と対照しながら内容の正確な読解を進め、さらに(3)本書に説かれる教理の思想的特色や独自性の検討を行なう。そして、最終年度には『三法度論』について総合的な検討を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費では主に部派仏教関係の図書を、消耗品では主にPCソフトなどを購入する。古写経を実見する必要性がある場合には現地調査のための旅費を要する。
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