2013 Fiscal Year Research-status Report
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23720027
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林寺 正俊 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60449361)
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Keywords | 仏教学 / 古写経 / 『三法度論』 / 『四阿含暮抄解』 / 依品 / ヴァスバドラ |
Research Abstract |
本研究は、近年の古写一切経調査により従来の諸版本とは異なることが判明し、しかもより本来的な形態を留めている可能性が高いと推定される新出の古写経善本を用いることによって、インド仏教の有力な部派でありながらその全容があまりよく知られていない犢子部(とくしぶ)の伝えた『三法度論』の本文テキストを確定するとともに、異訳の『四阿含暮抄解』と対比しながら内容を正確に読解することによって、本書に説かれる教理ならびに犢子部の思想を明らかにすることを目的としている。 本書は、インド語原典もチベット訳もなく、二種の古い漢訳でのみ伝わり、内容的に難解な教義学的議論を含んでいる。かかる本書の性質に鑑みて、全3章から成る『三法度論』を三つに分け、当該課題研究期間の初年度には第1章「徳品」を、第2年目には第2章「悪品」を中心に考察したが、第3年目の本年度は第3章「依品」に焦点を当てて、以下の3点の作業を行なった。 (1)従来の諸版本では明瞭に区別されていない、ヴァスバドラ自身の手になる経とそれに対する注釈文とを、古写経に基づいて峻別し、また諸本の校異をとって、「依品」のテキストを確定した。 (2)テキストの確定作業と並行して、登場する仏教術語の原語を推定しながら、また『四阿含暮抄解』の対応部分を参照しながら、「依品」の読解を進めた。 (3)「依品」に説かれる、陰、界、入などの教理について、他部派の文献における扱い方と比較検討することにより、その特色を明らかにしようと試みた。ただし、この点については、まだ完全な解明には至っていない。 なお、3年間の基礎作業によって本書における教理展開の特色が一部明らかになってきたので、その知見を学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は『三法度論』の第3章「依品」に焦点を当てるとした当初の計画通りに進んでいる。ただし、「依品」に説かれる教理の特色については、検討を試みてはいるものの、まだ充分な解明には至っていない。この点については、他の章品の考察や他の論書などとの比較を通して進展する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
古写経に拠りながら校異を取りつつテキストを確定し、あわせて異訳の『四阿含暮抄解』と対照しながら内容の読解を進めた、これまでの3年間における基礎的作業を踏まえた上で、研究期間の最終年は、本書に説かれる教理・思想をさまざまな観点から総合的に検討するとともに、部派仏教全体において本書がどのような位置を占めているのかという巨視的な観点からの考察を進める。 なお、本書は漢訳資料としてのみ現存するが、本来のサンスクリット原題についても、本書の内容分析を踏まえつつ検討を加える。
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Research Products
(3 results)