2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720029
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
橘堂 晃一 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00598295)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 国際情報交流(ドイツ) |
Research Abstract |
当研究の今年度の目的は、研究対象となるウイグル語「唯識文献(Lehrtextとして分類される)」を閲覧し、デジタル化された資料では判読できない部分を確認することにあった。これについては2012年1月2日より9日にベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミー・トルファン研究所を訪問した。1週間の滞在中、唯識文献の全体の2分の1の写本を閲覧することができた。この調査で得られた成果に基づき、デジタル写真から作成していたテキストを大幅に修正することが可能となった。これに加えて新たに接続する断片を多数見出すことができたことは、大きな進展であった。以上の作業に基づいて、ウイグル文唯識文献の基本的なテキストと翻訳を作成中である。現在までに復元できた本文献の構成の概要は次のとおり。第18章(福智資糧)、第19章(内容不明)、第20章(十住、十行)、第21章(十迴向)、第22章(十迴向?)、番号不明の章(三身)、第30章(玄奘賛)。 図版の作成を開始した。まずトルファン研究所のウェブサイトで公開されているデジタル写真を取り込んだ。そして各断片をPothi形写本の想定される位置に配置して、復元図を提示する。さらに接続することが判明した断片については、Photo Shopを利用して接合図版を作成した。現在までに約半分の作業を終えている。 当初2012年度に計画していた語彙索引の作成にも着手した。これは全ての語彙、述語、用例を抽出する。とくに漢文との対応を示す語彙については、漢文の用例も示している。この索引は、庄垣内正弘氏が作成したアビダルマ文献の索引とともに、ウイグル文仏教文献の解読に大いに資するであろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
写本の閲覧については、当初今年度中に全てを閲覧することを予定していたが、時間的な制約により半分にとどまっている。図版については、当初の予定どおり順調に進捗している。語彙索引は2012年度の計画を前倒しする形で作業を開始した。 以上、当初の予定より遅れている作業もあるが、次年度の計画を前倒しして開始し、予定より早く進捗している作業も考慮に入れると、本研究計画は現在までのところ計画通りに進捗しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外調査:2011年に閲覧することができなかった写本については、2012年8月にベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミー・トルファン研究所を訪問し、確認する予定である。また、パリの国立図書館に保管される敦煌出土のウイグル語写本に含まれる「菩薩修行道」と呼ばれる文献を閲覧する。図版:アルバイトを雇用し、今年度に引き続き作成を継続し、完成させる。 語彙索引:アルバイトを雇用し、昨年度に引き続き作成を継続し、完成させる。以上のデータを分析し、最終的にウイグル文「唯識文献」のテキスト、和訳、語彙索引、図版の完成を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費:8月にドイツ(ベルリン)ベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミー・トルファン研究所のウイグル文「唯識文献」の写本を調査する。10月に中国(北京)の民族大学で開催される古代トルコ語に関するシンポジウムに参加し報告する予定。東洋文庫に保管されるロシア所蔵のウイグル語文献のマイクロフィルム資料の調査。人件費:図版と語彙索引作成の補助員としてアルバイトを雇用する。物品費:報告書作成に必要な物品の購入。
|