2011 Fiscal Year Research-status Report
「日本道観」研究―現代日本文化における道教の受容について―
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23720035
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
長澤 志穂 南山大学, 南山宗教文化研究所, 研究員 (90535329)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 道教 / 中国思想 / 宗教 / 日本文化 / 比較思想 |
Research Abstract |
平成23年度においては、まず、「日本道観」の沿革・現状を把握するための資料・情報収集を行った。具体的には、「日本道観」の刊行物およびホームページから情報収集し、そこから得られた団体の沿革・現状・思想についてのデータを整理した。また、創始者早島正雄の著書を多数収集し、団体の思想的基盤となっている道教思想がいかなる内容をもつのか分析を進めた。とくに、早島氏の修養法の基盤である導引術について、その方法と思想を調査した。本研究の目的の一つは現代日本における道教受容の特徴を明らかにすることにある。そのため、分析にあたり、当年度は中国道教思想の歴史的研究をも同時に進め、日本における道教思想解釈の思想的背景と変容について考える際の比較対象とした。これにより、「日本道観」の道教受容にいかなる特徴があるのかを抽出する作業を進めた。 また、「日本道観」にコンタクトを取り、団体の設立の理念、これまで行われてきた道教的修養法の指導、儀礼の開催、海外交流事業の歴史、現在の組織構成、会員数などについて情報収集を進めた。当年度は団体本部のある福島県が災害に見舞われたため、本部における道教的修養の実践指導や道教儀礼について参与観察することが難しかった。しかし一方で、被災状況下における道教思想の役割についての団体の見解・姿勢をうかがうことができ、本研究課題の追求に有効な視点を加えることができた。 さらに、中華圏の宗教研究者の協力を得て、現代中国人と現代日本人との宗教受容の差異について議論する場を2回設けた。これによって道教に対する関心の変容とその日中における違いについて新たな理解を得ることができた。 当年度において得たデータの多くは先行研究において未だ扱われていないものであり、現代日本文化における道教的修養および儀礼の位置づけと意義について新しい知見をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の研究の柱の一つであった「日本道観」の沿革と組織に関する資料・データ収集は、ほぼ予定通り進めることができ、分析の基礎となる材料を整理することができた。また、創始者早島正雄の著書を多数収集し、団体の思想的基盤となっている道教思想がいかなる内容をもつのか分析を進めることができた。 同時に、比較研究のために行った中国道教の修養思想の歴史的研究についても、一定の成果をあげることができた。 また、中華圏の研究協力者と議論の場をもつことにより、現代中国および現代日本における道教受容の差異について新たな理解を得ることができた。 一方で、平成23年3月の東日本大震災の発生により、調査対象である「日本道観」の本部のある福島県いわき市も甚大な被害を被った。そのため、当団体の国内および海外における活動は大幅に制限されざるをえず、当該年度に実施を予定していた参与観察および海外事業への同行調査は次年度に移すこととなった。 以上により、文献・資料の収集および調査に関してはおおむね順調に進んでいるといえるが、フィールドワークに関してやや実施時期が遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、震災後1年がたち活動を復旧させつつある「日本道観」に対する訪問調査を実施し、日本人による道教的修養および儀礼の実施について参与観察を進める。また、指導者及び会員における修養・儀礼の解釈と位置づけについて聞き取り調査を進める。被災状況下における道教思想の役割についての当団体の見解・姿勢についても、対話を通じて分析・整理する。 同時に、前年度に引き続き文献・資料による調査をも進め、「日本道観」の思想を道教思想史の中に位置づけることによって、現代日本における道教思想の受容と変容の一事例として分析し、その特徴を明らかにする。 また、前年度に実施できなかった台湾における「日本道観」の活動についての渡航調査を実施する。このフィールドワークを通じて、当団体の道教受容と現代の中華圏の人々の道教受容との差異について比較研究を行う。このことについて中華圏の研究者と引き続き議論を重ね、一定の見解を得る。 最終的に研究成果を取りまとめ、論文やデータベースなどのかたちで公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、研究の継続遂行に必要な物品・書籍・消耗品等の購入を行う。 次年度使用額については、次年度の請求額と合わせて執行するにあたり、主に「日本道観」の福島本部および地方支部、「日本道観」と連携している台湾の道教団体を訪問調査するための旅費の一部に当てる予定である。 また、国内外の研究協力者に議論・調査に協力してもらう際に、謝金および旅費を支出する。 最終的に成果をまとめるにあたり、報告書の印刷等、成果の公開にも支出を予定している。
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