2013 Fiscal Year Research-status Report
翻訳の思想とその現代性:20世紀フランス・ドイツにおける思弁的翻訳論の横断的研究
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23720038
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
西山 達也 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (40599916)
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Keywords | 翻訳の思想 / フランス:ドイツ / ヘルダーリン / ブランショ / レヴィナス |
Research Abstract |
本年度は19-20世紀のフランス・ドイツにおける翻訳思想の展開を精査する作業を継続し(1)、また、古代哲学の近代における翻訳の実践の事例として(2)プラトン哲学を独自の仕方で翻訳・解釈したエマニュエル・レヴィナスおよびフリードリヒ・ヘルダーリンの翻訳思想に関する研究を行なった。 (1)の作業の成果として、日本フランス語フランス文学会2013年 春季大会(バタイユ・ブランショ研究会)において、ワークショップ「翻訳の思想、再考」を開催、「翻訳における〈意味 の再現〉について」という発表を行なった。本発表では、ヴァルター・ベンヤミンの翻訳論「翻訳者の使命」に関してフランスの思想家モーリス・ブランショが執筆した論考を精読することで両者の翻訳をめぐる思想を対比し、さらに、両者が〈意味の再現〉という翻訳の規範をめぐっていかなる思考を展開しているかを検証した。 (2)の作業の成果としては、西日本哲学会第64回大会にて「レヴィナスとプラトンの 現象学的解釈:『全体性と無限』における『パイドロス』読解」を発表、ま た、「翻訳実践と言語の倫理:ヘルダーリンとプラトンを繋ぐもの」と題して、研究発表会「ギリシアの哲学と文学」(科学研究費基盤(B)「プラトン正義論の解釈と受容に関する欧文包括研究」主催:代表 納富信留)にて発表を行なった。 さらに、これらと並行して(3)近現代における翻訳思想のありかたをめぐる研究を暫定的に総括すべく、アメリカ合衆国の哲学者ジョン・サリスの著書『翻訳について』の翻訳書を刊行し、これに翻訳思想と哲学史の関係をめぐる論考(「翻訳、この錯綜するもの――ジョン・サリス『翻訳について』を読む」)を併載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果として、第一に、アメリカ合衆国の哲学者ジョン・サリス著『翻訳について』(月曜社)を出版し、本書の併載論文にて〈翻訳の思想〉をめぐる現時点までの研究の一端を世に問うことができたことが挙げられる。本書は、英語圏で活躍する哲学者が、現代におけるコミュニケーション万能主義の根本に潜む「無翻訳の夢」をその哲学的な根源にまでさかのぼって問い直し、また、ベンヤミン、ハイデガー、ガダマーといった現代の哲学者たちが「翻訳」をめぐって思考を展開した際に賭けられていたものが何であったかを説き起こす著作である。併載論文では、サリスの著作において、プラトン・アリストテレスからキケロ、ロック、ヘーゲル、ニーチェにいたるまで、西洋の思想・文芸を支配し続けてきた「翻訳の形而上学」の内実がいかに記述されているか――とりわけプラトン学者でもあるサリスがプラトンにおける翻訳思想をどのように読解しているか――を検討した。 本年度は上記以外に、3本の口頭発表を行なった。次年度以降適切な発表形態を選択し、すみやかに公開を図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き20世紀のフランス・ドイツをはじめとするヨーロッパ思想における<翻訳の思考>の展開を精査する作業を継続する。また、3年次に本研究の暫定的な総括としてジョン・サリスの著書の翻訳刊行をおこなったので、本年度はアメリカ合衆国を含め、翻訳思想をめぐる現代的な知の布置に関して研究を継続して実施し、翻訳思想の研究のための方法論的基礎づけとその現代的意義についての研究をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の変動にともなう端数である。 物品費の変動にともなう端数であるので使用計画に変更はない。
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