2012 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ、ネイション、文明――思想史的アプローチによる
Project/Area Number |
23720039
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 大右 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30600225)
|
Keywords | ヨーロッパ / ポール・ベニシュー / 欧州統合 / ロマン主義 / C・L・R・ジェイムズ / エリック・ウィリアムズ |
Research Abstract |
主として18世紀から19世紀前半にかけての時期を対象とし、関連する一次・二次文献の渉猟に努めた。18世紀はヨーロッパ理念の展開において重要な時代である。17世紀に至るまで結局のところはキリスト教共同体の観念に比べるなら重要なものではなく、それなしでは意味を成さなかったヨーロッパの観念が、〈啓蒙の世紀〉の世俗的な哲学者たちの議論のもとでようやく、宗教から独立な形で確立していくからであり、またその境界画定上の困難を回避すべく、伸縮可能の中間的領域としての「東ヨーロッパの発明」(ウルフ)がなされるからである。 当時の思想動向を、世俗的プロセスの展開の中での新しい精神的権力の形成の観点から捉えたポール・ベニシューの『作家の聖別』の翻訳に取り組んだ(共訳)。2013年夏には刊行される予定であるが、2012年度においては、日本フランス語フランス文学会と社会思想史学会の二つの学会において関連イベントを実施し、ロマン主義というヨーロッパ規模の運動をめぐる諸問題を、各国(とりわけイギリスとドイツ)との比較の観点をも踏まえつつ深めることができた。 以下の論文を執筆した――「革命家と首相の見たアフリカとカリブ海域――C・L・R・ジェイムズ『ブラック・ジャコバン』とエリック・ウィリアムズ『コロンブスからカストロまで』を中心に」(三宅芳夫編『移動と革命』、論創社、2012年9月)。 以下の翻訳書を刊行した――フランソワ・ドゥノール、アントワーヌ・シュワルツ『欧州統合と新自由主義――社会的ヨーロッパの行方』(論創社、2012年8月、共訳)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18世紀後半から19世紀前半にかけての社会思想・政治思想の展開を踏まえつつ文学史研究を刷新する試みであるポール・ベニシューのロマン主義研究の第一巻、『作家の聖別』の訳出を進める一方、関連するワークショップ/セッションを二つの学会において実施し、ロマン主義というヨーロッパ規模の運動をめぐる諸問題を、各国(とりわけイギリスとドイツ)との比較の観点をも踏まえつつ深めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は主として16世紀から両大戦間期までの時期を分析の対象とする。しかし第二次大戦後から21世紀初頭の現在に至るまでの諸問題については、計画にとらわれずに常時検討を続け、そうして培われたアクチュアルな問題関心を、研究本体へと絶えずフィードバックしていきたい。日本における文明論の研究についても、同様の心構えで臨む。研究成果については、適宜個別的な論文または学会・シンポジウム発表の形で公表することを心掛ける。論文については、必要に応じ、フランスの媒体への投稿も考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、16世紀から20世紀前半までのフランスならびにヨーロッパ史・思想史を広く取り扱うばかりでなく、第二次大戦後から現在に至るまでの欧州統合プロセスをも視野に収め、さらに派生的研究として、「西洋の衝撃」への反応として日本で生み出されることとなった諸々の思想的営為の検討をも企てる。広範な時代・地域を対象とし、関連分野もきわめて多岐に渡るこのような地域横断・領域横断的研究を遂行するに伴って、次年度も多くの書籍の購入を行う。資料調査のためのフランス渡航も予定している。
|
Research Products
(4 results)