2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ、ネイション、文明――思想史的アプローチによる
Project/Area Number |
23720039
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 大右 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30600225)
|
Keywords | ポール・ベニシュー / レイシズム / 文明 / 文化 |
Research Abstract |
主として19世紀後半から両大戦間期までの諸問題に関し、一次・二次文献の渉猟に努めた。この時期には、先進国フランスの「文明」に立ち向かう後進国ドイツ(プロイセン)が、自らの理想を「文化」という別の語に託し、物質的・外面的な普遍的成果を誇示する前者に対しての内面的で特殊的な後者の優位を掲げていたことが知られている。この対立はドイツ系の学問が支配的だった戦前日本の学界では周知のものだったのがいったん忘却され、ナショナリズム論が隆盛となった1990年代以降に再度注目を集めることとなった。ただし、この対立図式が一見そう見えるほどには明瞭なものではなく、様々な両義性を帯びているという点に留意する必要があろう。 論文「フランスと日本の右傾化とレイシズム――アイデンティティ派と在特会」においては、フランスおよび欧州諸国の新しい極右的イデオロギーの担い手である「アイデンティティ派」の運動を扱った。この運動を特徴づけるのは、各国のナショナル・アイデンティティの確立という旧来の右翼にとっての課題を、一方では国民国家内部の諸地方の独自性の再評価によって、他方では諸国民国家を包摂するヨーロッパ・アイデンティティの重視によって、補完することである。 18世紀後半から19世紀前半にかけての思想動向を、世俗的プロセスの展開の中での新しい精神的権力の形成の観点から捉えたポール・ベニシューの『作家の聖別』の翻訳に、引き続き取り組んだ(共訳)。2014年夏には刊行される予定である。 CPAG若手研究者ワークショップ「ヨーロッパとその他者」(東京大学東洋文化研究所)に参加し、「ヨーロッパ理念の歴史と現在」と題して、本研究の枠組みに即した発表を行った。
|
Research Products
(5 results)