2013 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀のイギリスにおける道徳哲学の組織化と功利主義理論の展開
Project/Area Number |
23720040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川名 雄一郎 京都大学, 白眉センター, 助教 (20595920)
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Keywords | 功利主義 / 哲学的急進派 / 国際情報交換 / イギリス / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
最終年度に当たる本年度は主に(1)哲学的急進派の民主主義観の多様性、(2)ベンサムの共和主義観、(3)19世紀イギリスにおけるミル『論理学体系』の普及過程について分析をすすめた。 (1)については、主にベンサム、ジェイムズ・ミル、ジョージ・グロート、J・S・ミルの(代議制)民主主義に関する見解を比較し、単純に功利主義的民主主義論として一括りにすることのできない認識の多様性を詳細に検討した。 (2)については、イギリス国制の急進的改革を主張し、君主や貴族の存在しない「純粋な民主主義」が政治的安定や経済的繁栄と両立している実例をアメリカに見出し、アメリカの代議制民主主義を教条的に賞賛していたベンサムのアメリカに対する評価がアメリカについての正しい認識に基づいていたのか、別の言い方をすれば、ベンサムがアメリカの政治制度の特質を正しく理解していたのかを検討した。その際には、『フェデラリスト』、そのなかでもジェイムズ・マディソンの議論との類似性に着目した。 (3)については、『論理学体系』の詳細な内在的検討をすすめるとともに、彼の議論をとりまいていた19世紀のイギリスにおける論理学・科学方法論をめぐるコンテクストの分析をすすめた。とりわけ、『論理学体系』を執筆する際にミルが彼以前の論理学の伝統をどのように理解していたか、そして自らの著作の論敵や読者層としてどのような人々を念頭においていたのかという点に着目して研究を進めた。
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