2013 Fiscal Year Annual Research Report
「インテグリティ」概念の思想史的研究--「器官」から「身体」へ
Project/Area Number |
23720043
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
橋本 一径 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70581552)
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Keywords | 西洋思想史 / 医学史 / 科学技術史 / 身体論 / インテグリティ / ミシン |
Research Abstract |
「インテグリティ」概念を思想史的に検討する本研究の最終年度である本年度は、前年度までの成果を引き継ぎつつ、主として以下の2点を中心に繰り広げられた。 (1)近代における身体概念の変容と機械化--ミシンの歴史を中心に。本研究の仮説によれば、「インテグリティ」は「身体」という概念の近代的な代理物であるが、この近代的な身体観の成立には、身体と機械とが取り結ぶことになった新たな関係が深く影響している。この問題について考察するための具体的な糸口として見出されたのが、「ミシン」の歴史だった。すなわち19世紀を通じてミシンは、それを使用することが身体に及ぼす悪影響をめぐって、医学的な議論の対象となっていたのである。本研究はこの点に、身体と機械とが有機的に結びつく「サイボーグ」的な身体観の原型を見出し、前年度に引き続いて、補足的な文献調査と、学会での発表および論文の執筆を行った。 (2)「インテグリティ」概念の変容--医学から法学へ。今日において生命倫理などの分野で広く用いられている「インテグリティ(身体の全体性)」という用語が、どのような来歴を持つ語であるのかを明らかにすることが、本研究の主たる目的の一つであるが、この点に関して本年度は大きな手がかりを得ることができた。この語が免疫学に由来するものであることは、すでに昨年度までの調査で明らかになっていたが、本年度は、免疫学の歴史をたどり直すことで、この学が、単に病原菌に対する抗体を対象とする学から、身体全体の保全を対象とするものへと変遷する過程において、「インテグリティ」が問題となることを確証することができた。さらにこの語が法学へと移入されたのが、20世紀初頭における妊娠中絶をめぐる議論であることも明らかにすることができた。
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Research Products
(2 results)