2011 Fiscal Year Research-status Report
「文化資本としてのマンガ」の思想的影響に関する国際比較
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23720045
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
吉村 和真 京都精華大学, マンガ学部, 准教授 (00368044)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 文化資本 / マンガリテラシー / マンガ産業論 / 比較文化論 / マンガ教育 / マンガ・アニメ施設 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ピエール・ブルデューが提唱した「文化資本」概念をふまえ、身体化・制度化・客体化の三つのレベルから、日本・韓国・シンガポールの比較を通じた「文化資本としてのマンガ」の思想史的考察を行うことである。 平成23年度は、韓国を代表するマンガ施設・韓国漫画映像振興院への取材と、韓国の二つの高校へのアンケート調査を実施(アンケート回収数は計画で下限設定していた100人超となった)、韓国における制度化・客体化された文化資本の実態把握を行った。韓国のマンガおよびアニメ教育は国策レベルで取り組まれており、相応のカリキュラムと設備環境が整備されているが、国内のマンガ市場規模は年を追うごとに縮小しており、漫画家やアニメーターのキャリア支援が大きな課題となっている。そうした状況のなかで、子供たちがいかなるビジョンのもとにマンガ関連の教育機関に進学するのか、また、それまでにいかなるマンガ環境のもとに育ってきたのかを考察することは、文化資本の観点から日本の〈マンガ市場〉や〈マンガ読者〉のポジションを相対化するうえでも意義があった。 一方、日本に関しては、現在国内で唯一マンガ学部を擁する京都精華大学のマンガ学部設置理念やカリキュラム策定ポイントなどを調査のうえ、平成24年度に同大学に開設した博士後期課程を含むマンガ研究科、またはそれらの前身となる平成12年度開設のマンガ学科、について、それぞれの沿革や理念、組織改編のねらいなどを整理した。 当初計画していたシンガポールに関しては、アンケート実施予定先の研究協力者、実施の時期や対象、目的等を調整したが、平成23年度中のアンケート実施には至らなかったため、平成24年度に順延して対処する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シンガポールにおける客体化・身体化された文化資本の実態調査を目的とした、シンガポールの中学高校生へのアンケート調査、および、日本における同様の実態調査を目的とした、京都国際マンガミュージアムの来館者へのアンケート調査が未実施であるため。 また、シンガポールに関しては、市場調査を兼ねた現地書店および研究者への取材も今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度実施予定であった、シンガポール出張および京都国際マンガミュージアムでの調査は平成24年度に順送りとする。これに際しては、平成23年度に実施済みの韓国のアンケート調査結果から浮上した論点を整理し、予見可能な範囲で回答結果の分析に備えることとする。 また、韓国の調査に関しても必要に応じて追加出張を行い、最新の市場動向や教育現場の個別ケースなど、国際比較のための具体的かつ効果的な素材収集にあたる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国への追加出張や国内出張の増加による出張経費の経費負担については、設備備品費や資料費等を抑えることで調整を図る。
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