2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720049
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
高橋 健一 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (70372670)
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Keywords | トンマーゾ・ラウレーティ / ジャンボローニャ / 対抗宗教改革 / マニエリスム / ガブリエーレ・パレオッティ / ボローニャ / ローマ / 噴水 |
Research Abstract |
画家・建築家・水道技師のトンマーゾ・ラウレーティ(パレルモ1530年頃~ローマ1602年)が担当した代表的事業、ボローニャの《ネプチューンの噴水》(1563~1567年)について、1点の論文を公刊した。従来の研究では、その装置全体の図像プログラムがラウレーティに負うことが共通して認識される一方で、頂上のネプチューンの着想は基本的にジャンボローニャに帰されていた。それにたいして、本論文では、ボローニャ、ヴィッザーニ宮殿の「アレクサンドロス大王伝」連作など、若きラウレーティが実現した絵画に注目することで、当のパレルモ人美術家がその噴水の彫像の生成にも大きく関与した可能性を指摘している。 また、ローマ、コンセルヴァトーリ宮殿の「諸隊長の間」のフレスコ画装飾(1587~1594年)という、ラウレーティ晩年の重要な仕事についても、論文をまとめている。この一連のフレスコ画は、「参照指示と引用の意識的な遊び」とも「すでによく知られて利用された形態やイメージのアンソロジー」とも、(否定的に)評される。しかしこれは同時代のローマで最も重要な絵画作品のひとつとして、次世代の美術家たちにもすくなからぬ影響をあたえていた。本論文では、その表現の特質を、ガブリエーレ・パレオッティらによる対抗宗教改革期の美術理論との関係において、理解しようと努めた。 これらの研究をとおして、ジャンボローニャからカラヴァッジョへ、という時代の大きな美的趣味の変化を、ラウレーティが自ら体現すると同時に牽引してきた存在であるということを、示そうと試みた。
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