2013 Fiscal Year Annual Research Report
抽象化における「構成」概念の萌芽――シュトゥットガルト美術アカデミーを中心に
Project/Area Number |
23720051
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
青木 加苗 京都市立芸術大学, 美術学部, 客員研究員 (70573905)
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Keywords | アードルフ・ヘルツェル / バウハウス / ヨハネス・イッテン / オスカー・シュレンマー / ダッハウ / シュトゥットガルト / 色彩論 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、アードルフ・ヘルツェルを中心としたグループに見られる、抽象化と構成概念の同時的発生を明らかにし、それがバウハウスへと組み込まれてゆく経緯を明らかにすることを目的とする。初年度のヘルツェルによる画面構成理論の検討に始まり、二年目のヘルツェル・サークルの形成に関する研究を経て、最終年度となる三年目には、ヘルツェルの色彩理論にみる調和と全体性の概念の中に、直接バウハウスへとつながる視点を探った。 具体的に取り上げたヘルツェルの色彩理論に関するテキストは、自身による講演録や、ダッハウ時代の学生との書簡、またシュトゥットガルト時代の学生であったヨハネス・イッテンが記した「ヘルツェルとその周辺」展カタログ内のテキストである。これらを手掛かりに、実際の作品上での色彩の扱いと画面の抽象化が進む過程を相互に検証した。結論を簡略に述べれば、一般的に「構成」という作業が、対象を線や面という造形要素に一旦分解してから再構築というかたちで行われるのに対し、ヘルツェルの絵画においては、画面という閉じた空間の中で、簡略化した対象の形態と、画面内での重心を左右する色彩のコントロールによって、対象を分解することなく一つの世界として直接構築されてゆく。そしてこの調和的、あるいは全体性を強く示す世界観が、バウハウスに引き継がれてゆく造形観でもあり、ヨハネス・イッテンやオスカー・シュレンマーの理論や作品の中に明らかに見出すことができるのである。 また初期のヘルツェルの活動に関してウィーンでの調査、ヘルツェルの学生であったバウマイスターに関する調査などを継続して行い、今後の展開へとつなげる資料の収集および現地研究者との情報交換等も行った。
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