2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720065
|
Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
岩佐 伸一 (財)大阪市博物館協会, その他部局等, 学芸員 (70393288)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 近世絵画 / 美術史 / 寄合描き / 上方 / 江戸時代 / 合作 |
Research Abstract |
本課題では、近世期に制作された寄合描きにかかる諸相の解明およびデータベース作成作業を目的とし、本年度は下記の成果を得た。 1)展覧会図録や美術図集をはじめとする絵画関係の書物から寄合描き作例の抽出を行ない、江戸時代初期から幕末期にいたるまでの約80作品を確認した。 2)寄合描きに関係した人々に着目すると、多様な流派に属する絵師、幅広い身分の人々により手掛けられていたことが確認できた。また制作の背景として、書画収集と鑑賞の結果、成立した作品以外には、追善会の席上で関係者が故人を偲んで制作した作品など何かの契機があった作品が確認できた。 3)現存作例の内には、円山派と四条派の絵師による作例が複数確認できた。円山派と四条派は共に写生を基本にした近似した作風を示しており、秋七草図や飲中八仙図など、ひとつの画題を複数人で描き継いでいることが多い。これに対して、写生画系画派とそれ以外の絵師、または非職業絵師が寄合った場合には、各々が完結した小画面の一図を描き、それらが一幅の画面に集成されて一図となる傾向が確認でき、流派の基礎とする表現が近似するかしないかで、画面構成に差異のあることを確認した。 4)収集した作例の諸データを採取・入力し、データベースの構築に着手した。他分野の研究者にも検索容易のデータベースとするために項目の選択を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の作業は、(1)書籍からの作例抽出、(2)古典籍に見る寄合描きの同時代的記述の抽出、(3)機関および個人に所蔵される作品の熟覧と作風の分析、(4)在外の作例確認を予定していた。これらのうち、(1)については当館所蔵のほぼすべての図録を閲覧し50例以上を見出した。当館に所蔵していない美術全集については、掲載されている可能性があるものの未見の書物が多くあり今後の課題としたい。(2)については、(1)を優先して調査を進めたため進捗がやや遅いものの、近世期の学画、画伝書自体の把握は済んでおり、所蔵機関へ出向いて閲覧する準備は整っている。(3)については随時作品の実見を進めており、現存例を約30例閲覧し、寄合描きにおける絵師間の画風や彩色の調整など微細な表現の確認をすることができた これらより、概ね初年度の所期の目的は達成することができ、今後は作例のさらなる発掘と、表現上における史的の変遷、流派による表現の特色などの深化を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点では、当該課題にかかる作例の集成量が十分ではないと考えられるため、さらなる作例発掘に努める必要がある。よって引き続き文献掲出作例および現存作例の把握を進める。現時点では、日本美術史研究者への聞き取り調査などは進んでいないため、今後の実施を検討している。 作例の調査と共に、近世期の文献において寄合描きがどのように記されているのかの確認を進め、同時代人における認識を明らかにする。 作例を集成したデータベースの構築も進めており、データ入力から一歩進んで、検索可能な試作ソフトの制作を考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に下記費用への支出が見込まれる。(1)作例集成ならびに実見のための出張旅費。(2)研究遂行に必要な原資料が市場に出た場合に資料購入費。(3)データベースの設計構築費。
|