2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720065
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
岩佐 伸一 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (70393288)
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Keywords | 近世絵画 / 美術史 / 寄合描き / 上方 / 江戸時代 / 合作 / 日本画 |
Research Abstract |
本課題の主眼である、近世期に制作された寄合描き作品の集成とその表現の解明のために作業を進め、本年度は下記の成果を得た。 (1)前年度に引き続き、展覧会図録や美術全集などの出版物からの寄合描き作品の抽出を行い、約50点の新たな作例を知り得た。よって現段階では130点ほどの近世期における掛軸状の寄合描き作例を確認することができた。これ以外にも、襖や屏風、巻子や画帖における寄合描きは多数知り得たが、鑑賞者がひと目で画面全体を視野に入れることができ、かつ一面の支持体における作例を中心に研究することが、寄合描き作品における画家の作風の諸相を考究することにつながるため、本研究ではそれらは参考程度にとどめ、主要な考究の対象とはしなかった。 (2)主に個人に所蔵される寄合描き作品を調査し、十数点を実見した。そのなかには、絵と文字による賛が混在している作品が多く、賛の解読と絵師ではない賛者にかかる情報の収集に努めた。 (3)従来知られていた寄合描き作品に関わった人々の職業や身分を見ると、絵師を職分とする者か武士、町人、富農であったが、本年度の調査において、公家層の手になる作例を確認し、寄合描きを手掛けた人々の身分的広がりを確認することができた。また、公家層の関与する作例においては、和歌と絵の混在が、高確率で見られることを確認した。公家の画業については、研究の事例が僅少であり、彼らの伝記と画歴の収集にも努めた。 (4)昨年に引き続き、作例のデータベース化を進め、作例の入力に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の作業は、(1)書籍からの作例抽出、(2)個人や機関に所蔵される作品の実験と熟覧、(3)画伝、画史類等の書物に記載された寄合描きに関する記載の把握などを中心に進め、いずれにおいても分析に値する資料を調査することができた。 また、従前知られていなかった公家層のみの寄合描き作例を見出すことができ、当該の絵画表現が極めて広い範囲の人々に受け入れられていたことを確認でき、かつ表現が同時代に流行していた円山派風であることが同時代の他作品との比較で明らかにできた。 よって新出作品の作例分析も行うことができ、研究は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 江戸時代の上方における寄合描き作品のさらなる作例収集。 2) 特に作例の多い、円山派や四条派の合作において、絵師間の表現にどのような差異があり、鑑賞者にそれをどのように認識させていたのかという表現上の解析を行う。 3) 寄合描き作品における、上方と江戸、またその他の地域における同時代の作例における表現方法の際について考究する。 4) 寄合描き作品データベースの情報量の充実に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1) 作例収集及び熟覧のための出張旅費。 2) 研究遂行のために必要な実物資料が市場に出た場合に必要な資料購入費。 3) データベース設計およびデータ入力にかかる人件費。
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