2011 Fiscal Year Research-status Report
リストと彼の一派による「新ヴァイマル協会」―未来音楽、新ドイツ派との関連性
Project/Area Number |
23720073
|
Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
上山 典子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 助教 (90318577)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 音楽学 / 西洋音楽史 / 新ドイツ派 / 未来音楽 / 新ヴァイマル協会 / リスト / 交響詩 |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランツ・リストと彼の弟子や取り巻きたちがメンバーの中心を占めていた「新ヴァイマル協会 Neu-Weimar-Verein」(1854年結成)の実態を解明すること、そして1850年代に流通し、その協会とほぼ同じメンバーが代表者と理解されていた「未来音楽(の党派)」、「進歩派」、さらには1859年に進歩派筆頭の批評家フランツ・ブレンデルによって提唱された「新ドイツ派」との比較検証を行うことにある。 平成23年度は「新ヴァイマル協会」に関する資料収集をヴァイアルの図書館にて行うとともに、「未来音楽」、「進歩派」および「新ドイツ派」の概念考察を進めてきた。その結果、これらの集団のかかわりは単にメンバーの重複だけでなく、理念面にも広く及んでいたことが解明された。また1850年代の進歩派、すなわち1859年以降の「新ドイツ派」の実体的活動において、リストが開拓した音楽史の新しいジャンル「交響詩」と、ヴァイマル時代の弟子たちがその作品普及活動に果たした役割が極めて大きかったことにも注目した。この一派におけるリストの弟子たちの役割については、24年度に行う「新ヴァイマル協会」と「新ドイツ派」との比較検証作業につなげてゆくことになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏期にドイツで行った資料収集の結果、国内では入手不可能な多くの貴重資料を持ち帰ることが出来た。現在はこれらの読み込み作業を進めている。「新ヴァイマル協会」に関するすべての実態解明には至っていないが、その前提となる「新ドイツ派」や「未来音楽」、「進歩派」についての考察は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは平成23年度に引き続き、「新ヴァイマル協会」の実態調査と解明――リストと彼のヴァイマル時代の弟子、取り巻きたちが主なメンバーだったこの「協会」がどのような理念の下に、どのような活動を行っていたのか、また会の内部では誰がどのような仕事、役割を担っていたのか等々、「協会」の具体的な運営・活動状況の調査を引き続き行ってゆく。そして「新ヴァイマル協会」と「未来音楽」、「新ドイツ派」との関係考察――協会の理念や活動実態を把握したうえで、そのメンバーの多くを共有するほかの集団、「未来音楽」と「新ドイツ派」、「進歩派」との比較検証を行う。そして最終的には、リストと彼の弟子たちがメンバーとして果たした役割、活動状況を手がかりに、これらそれぞれ別の名称を与えられた集団の歴史的つながり、関係性を明らかにする予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は夏期に再びドイツを訪れ、「協会」の史料を世界で唯一書蔵するヴァイマルの「ゲーテ&シラー文書館」(Goethe- und Schiller-Archive)にて調査研究を行う予定である。またこれら一次資料だけでなく、今年度は1850年代当時の歴史、文化史的文献にも視野を広げ、「新ヴァイマル協会」がどのような活動を行っていたのか、音楽史のみならず、当時の社会においてどのような位置づけにあったのかを探ってゆきたい。そのため、取得研究費の多くを海外旅費に使用する予定である。そのほか、「新ドイツ派」に関する新しい文献が数点、来年度中に出版される予定なので、残りは洋書購入代に充てる予定である。
|