2011 Fiscal Year Research-status Report
市民の文化活動支援システムの国際比較:政策、非営利組織、劇場に注目して
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23720081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新藤 浩伸 東京大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70460269)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / イギリス / 生涯学習 / 社会教育 / 文化政策 / 文化施設 / 博物館 / 文化団体 |
Research Abstract |
(1)文化政策、生涯学習政策における市民活動支援プログラムの調査、(2)高等教育機関を含めた民間の文化活動支援ネットワークの調査、(3)劇場の教育プログラムの調査という三つの観点から調査を行ってきた。(3)の調査項目に関しては、博物館や公民館、図書館等も含め幅広く「文化施設」としてとらえなおし、地域において文化的な活動を行う生涯学習基盤としての場所のあり方に関する調査へと深めていくこととした。 年度前半は主に基本文献を通じた基礎調査を実施し、その成果は論文および学会発表等にまとめた(別項参照)。 年度後半は、予定していた英国調査を2~3月に実施した。ロイヤルアルバートホール、ヴィクトリア&アルバート美術館、ロンドン博物館等の文化施設を訪問し、アーカイブおよび教育関係の部門の担当者へのヒアリング調査を行った。また、非営利団体としてコミュニティアート活動のネットワーク組織(Mailout)、コミュニティアート活動を実際に行う団体(Action Factory)への訪問およびヒアリング調査も行った。予定していたアーツカウンシルオブイングランド、ロイヤルオペラハウス教育部門等は調整がつかず訪問できなかったが、担当者と連絡を取りメール調査を行うこととした。 これらの調査を通じて、イギリスの劇場、博物館、地域のコミュニティアート団体等の文化機関が、1960年代の対抗文化、多文化主義等のインパクトを受け、主に1970年代以降、様々な対象者に向けて教育プログラムを行っている歴史的背景が明らかになった。また、教育に留まらず、より積極的にソーシャルインクルージョンプログラムを行っており、文化施設および団体が地域の生涯学習基盤、さらには地域福祉の基盤にもなりえていることが明らかになった。このような多面的活動は、日本における文化施設および団体のあり方にも大きな示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は以下の理由から、当初の計画以上に進展している。 第一に、計画段階よりもさらに多様な調査対象を得て、それらの対象とのネットワークを形成できた点にある。例えば文化施設に関していえば、計画段階では訪問調査対象はロイヤルオペラハウスだけであったが、調査の進展および人的ネットワークの構築の中で、既述の通りより多様な施設の調査が可能となった。文化団体についても、Mailoutへの訪問がきっかけとなり、Action Factoryのような地域に根ざした非営利団体への調査を行う事ができた。こうした文化施設および団体の関係者とは、現在もオンラインで情報交換をネットワークが構築できた事で、継続的な情報収集及び交流が可能となっている。 第二に、計画段階では「劇場」にのみ限定していた視点を、既述のとおり「文化施設」とすることで、調査課題をより根源的に深めることが可能になっている。MLA(図書館、博物館、文書館)あるいはMLAK(K=公民館)といった文化施設間の連携が叫ばれていいる現在、施設縦割りでとらえてしまうことは、文化施設の機能を狭めることにもなりかねない。 第三に、これまで報告者が実施してきた研究との接続がより深くなされ、体系的な知見を得る事が出来た。報告者はこれまで「イギリス文化政策における教育の位置づけに関する研究-1970年代の改革を中心に-」(科学研究費補助金・若手研究スタートアップ)を2008-2009年に実施してきた。2008-2009年度の調査では、1970年代以降の労働党政権下における文化政策が、ハイカルチャー偏重から多文化主義へと舵を切り、多様な文化活動への支援を行い始めた改革の過程に注目した。今年度の現地調査で対象とした現在の文化施設および団体の活動の背景には、この改革があることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成24年度:第二次調査】4~6月にかけ、前年度の調査をふまえた文献および資料の再収集および精査を行う。7月に海外調査準備を行い、8月に海外調査を行う。(アメリカ、7日間) (1)全米芸術基金、(2)アイオワ大学、(3)メトロポリタン・オペラ教育部門訪問およびヒアリング調査を予定している。9月に日本社会教育学会における中間報告および研究内容へのフィードバックを行う。10月に海外調査結果の整理、収集資料の検討を行う。11月に日本文化政策学会における中間報告準備を行い、12月に日本文化政策学会における中間報告および研究内容へのフィードバックを行う。1月~2月に成果報告論文の執筆を行う(日本文化政策学会紀要を予定)。3月に第二次調査のまとめ、最終調査の準備を行う。【平成25年度:最終調査および最終報告】4月に最終調査事項の精査および確定、追加文献の収集をし、5~6月に追加文献検討による実態調査・分析・整理をする。7月に海外調査準備をし、8月に海外調査を行う。(ベルギー、5日間)(1)RESEO、(2)Culture Action for Europe訪問およびヒアリング調査を予定している。9月に日本社会教育学会研究大会における成果報告、11月まで成果報告論文の執筆を行う(日本社会教育学会紀要を予定)。12月に日本文化政策学会における成果報告を行い、1~3月に成果報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加文献および必要機材のための物品費(30万円)、調査および学会報告等のための旅費交通費(35万円)、調査データ集計のためのアルバイト謝金等(5万円)を計画している。
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Research Products
(7 results)