2012 Fiscal Year Research-status Report
日本演劇の近代化に於ける大正期「オペラ俳優」の特性について―沢モリノを中心に―
Project/Area Number |
23720084
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中野 正昭 明治大学, 文学部, 講師 (40409727)
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Keywords | 日本近現代演劇 / 演劇学 / 音楽劇 / オペラ / ミュージカル・レヴュー / 大衆文化 / 浅草オペラ / 西洋文化受容 |
Research Abstract |
前年度に引き続き本年度もオペラ俳優と浅草オペラの実態調査・分析として、関東地域の諸機関でのオペラ俳優および浅草オペラ関連資料の所蔵状況調査・収集、新聞・雑誌による東京での公演の把握と演目のリスト化、当時を知る関係者・観客への聞き書き作業を行った。前年度の課題だったアメリカに於ける沢モリノ調査は、現地機関と関係者の協力で出生など必要な調査をほぼ達成することができた。 特に本年度は資料面で充実した成果があった。オペラ座で演者が使用した「書き抜き台本」及び譜面の発見、また初期のオペラ座の日本館公演プログラム3点、日本少女歌劇団5点、ミカド座1点、金龍館レヴュー2点を含む浅草オペラ関連プログラムの実物18点を新たに確認した。なかでもオペラ座で大規模上演を行ったグノー作『ファウスト』(全3回のうち第1回、2回)、若松美鳥(小松耕輔)作の創作オペラ『コスモスホテル』という沢モリノ主演2作品の構成・配役・上演形態をプログラムの上から把握できたことは大きく、『ファウスト』に関しては上演台本ほかの資料と合わせることにより、物語上の脚色・改変部分、グランドオペラを浅草オペラ化する上での演出上の処理、レチタティーヴォや合唱など音楽的要素の省略・改変部分、歌唱・演技部分の実態、公演全体からみた各演者の技術水準を具体的に分析することができた。このオペラ座公演『ファウスト』に関しては論文で成果発表を行った。 また2012年度採択の科研助成研究『近代日本の<ダンス-モダンダンス>概念の形成に関する歴史研究』(研究代表:杉山千鶴、基盤(C))の研究分担者となり、浅草オペラと歌劇俳優の舞踊面からの考察の充実を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査・収集ともに国内はほぼ計画通り進行し、年度内の研究目的を達成できている。沢モリノ以外にも佐々木千里、安野文子の関係者の協力により、歌劇俳優の分析を男女ともに進めることが出来ている。 新しい進展として、科研助成研究『近代日本の<ダンス-モダンダンス>概念の形成に関する歴史研究』(研究代表:杉山千鶴、基盤(C))の研究分担者となり、舞踊研究者と研究の連携を行うことが出来るようになった。これにより個人研究の枠を拡げる大きな躍進となった。 しかしこうした国内調査の進展に対し、沢モリノに関しては最終公演の地である朝鮮民主主義人民共和国での調査が政情不安により未だ実現できていない。現在の国際状況が大きく好転することは考え難く、直接現地に赴かずに調査する方法への変更が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、浅草オペラ及び沢モリノに関する国内外諸機関での資料調査・収集、関係者への聞き書きを進め、これらを基に沢モリノを中心とした「オペラ俳優」の実態把握と解明、歴史的位置づけを行う。朝鮮民主主義人民共和国での沢モリノ調査は大韓民国及び国内での調査へと変更を行うこととする。 科研助成研究『近代日本の<ダンス-モダンダンス>概念の形成に関する歴史研究』(研究代表:杉山千鶴、基盤(C))の研究分担者として、浅草オペラの舞踊面に関する研究発表・共同研究を行うことで、近代舞踊に於ける歌劇俳優の舞踊技術の分析・考察の充実を図る。既に2013年夏にシンポジウムが予定されているので、本研究課題の問題提起を行うことで、演劇学関係者だけでなく舞踊学関係者への研究協力を求める考えである。 更に浅草オペラと同じ大正時代に「歌劇運動」を展開した宝塚歌劇が2014年に創設100年を迎えることもあり、2013年は宝塚歌劇関連の研究会やイベントから研究発表・講演の要請・依頼を受けている。劇団組織規模・舞踊技術の面で、同時代の宝塚歌劇は浅草オペラ劇団よりも優れており、研究者の層も厚い。宝塚歌劇研究者との連携を新たに図ることで、大正期の歌劇運動と歌劇俳優の総合的な調査・分析を多角的視野の下で行う考えである。 2013年度は研究最終年度であり、従来の調査と合わせてこれまでの研究成果のまとめ作業を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外諸機関での資料調査・収集、関係者への聞き書きのための旅費、物品(浅草オペラと沢モリノ関連資料、パンフレット、プログラム、SPレコード、写真、書籍等の購入)、その他(全国的に所蔵が限られている文献資料・日記などの現物資料の複写申請費・複写費)で研究費を支出する。またこれまで収集した資料のデジタル化と不測の事態へのバックアップ(外付けHDDとブルーレイ・ディスクでの二重保管)に支出する。
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Research Products
(1 results)