2013 Fiscal Year Research-status Report
無声映画の音―帝政期ロシアにおける初期映画興行研究
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23720086
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Research Institution | The National Museum of Modern Art, Tokyo |
Principal Investigator |
大傍 正規 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (40580452)
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Keywords | 無声映画の音 / 帝政ロシア / フランス・パテ社 / 初期映画研究 / 日露戦争関連映画 / 比較映画史 |
Research Abstract |
本科研費の助成を受け、当初は日仏の比較映画研究に留める予定であった博士論文は、最終的に「帝政ロシア」の事例も含めた博士論文「仏・露・日における無声映画の音―初期フランス映画の受容研究」(2013年7月23日、京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻 博士号取得)へと結実した。同論文は、仏・露・日の無声映画興行において「音」が果たしていた役割を比較映画史的に考察することにより、初期フランス映画の受容がもたらした日露両国の初期映画の変容過程において「音」が果たしていた役割を実証的に解明した論文である。 さらに博士論文での議論を発展させる形で、論文「越境するスターダムー帝政ロシアと日本におけるマックス・ランデーの受容」、堀潤之・菅原慶乃編『越境の映画史』、関西大学出版部、2014年3月、pp.57-98)を執筆した。帝政ロシアと日本におけるマックス・ランデーの受容の実態に迫るため、両国におけるフィルモグラフィの作成を行うとともに、音と結びついたランデー受容の実態にも触れることで、そのスターダムの共時的な越境性を顕在化させるとともに、両国それぞれの歴史的特殊性を浮かび上がらせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2012年8月以降、東京国立近代美術館フィルムセンターへの所属研究機関の変更に伴い、同館の通常業務である映画フィルムの収集、保存、復元及びアクセス対応が研究時間の大半を占めるため、本研究課題に従事可能なエフォート率は5%程度となっている。その限られた時間の中で、上記の研究業績を残すことはできたが、当初の研究計画からは進捗が大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
エフォート率の大幅な減少を踏まえると、前所属機関で交付を受けた科研費を有効に活用するためには、現所属機関の業務にも一部結びつける形で研究を遂行する必要がある。具体的には、東京国立近代美術館フィルムセンターが所蔵する「日露戦争」関連映画のカタロギングや、同映画群の分析をする際に、本研究課題で使用してきた映画雑誌、文献等を活用することも考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた主な理由として、当初予定していたペテルブルク出張を実施できなかったことがあげられる。 次年度は、帝政ロシア映画研究や日露戦争関連映画の調査研究の進捗状況にあわせ、ペテルブルクのみならず、ゴス・フィルモフォンドのあるモスクワ、インペリアル・ウォー・ミュージアムのあるロンドン、日露戦争映画を復元したばかりのフィルモテカ・デ・カタルーニャのあるバルセロナ、日本人女優「花子」主演のプロタザーノフ監督作品「L'amour Japonaise」(1913)を所蔵するシネマテーク・フランセ―ズのあるパリ等、複数の渡航地を検討したうえで、出張を実施したい。
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Research Products
(2 results)