2012 Fiscal Year Research-status Report
マリヴォーの作劇法を中心とした18世紀フランス演劇に関する基礎的研究
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23720090
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥 香織 早稲田大学, 演劇博物館, 招聘研究員 (30580427)
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Keywords | 芸術学 / 文化史 / 18世紀フランス / 演劇 / マリヴォー |
Research Abstract |
本研究では、マリヴォーの作劇法を中心に18世紀フランス演劇に関する基礎的研究を行い、特に18世紀前半のフランス演劇の諸相、作劇法とその特徴を明らかにすることを目的としている。 今年度は、前年度得られた成果を踏まえ、特に演技の視点から18世紀フランス演劇に関する研究を進めた。主として当時の演技論、同時代人の証言、戯曲等を調査・検討し、当時の演技方法を明らかにした上で、マリヴォーの作劇法との関連性を検討した。マリヴォーは性質の異なる二つの劇団、フランス人劇団とイタリア人劇団に作品を提供しているが、後者では俳優と役柄が一体化しており、その「自然な」演技が特徴であった。本研究では、これらの特徴が、まずは同劇団に提供された作品の枠内でマリヴォーのドラマトゥルギーに組み込まれていくが、最終的には両者の共同作業の枠を超えて作劇法の形成と発展に影響を与え、作家の創作活動における想像力の源泉となっている点を明らかにした。なお、同劇団の演技は、当時の「フランス式」演技からすれば異質なものであったが、本研究では、その独自の演技様式が同時代のフランス人作家に与えた影響を示すことで、彼らの演技が18世紀フランス演劇界において重要な役割を果たしている点も明示することができた。 調査は、主にフランス国立図書館・早稲田大学図書館・同大学演劇博物館の図書館で行い、18世紀フランス演劇の専門家であるパリ第四大学ピエール・フランツ教授との意見交換も行った。研究成果は、まず、18世紀パリのイタリア人劇団とその演技に関する研究を論文にまとめ(2012年10月)、次に、同時代の演技とマリヴォーの作劇法との関係性に関する研究を口頭発表(2012年10月)および論文として公表した(2013年3月)。また、日仏共同の国際シンポジウムにて、演劇性の観点からマリヴォーの作劇法について発表する機会も得た(2012年10月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の詳細に関しては多少前後したが、18世紀フランス演劇に関する基礎的研究を、おおむね順調に進展させることができた。当初はマリヴォー劇と他作家の比較を今年度に行い、演技の視点からの研究を次年度に予定していたが、前年度の研究成果との関連により、今年度は演技の視点からの研究を中心的に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を基に、18世紀前半のフランス演劇に関する研究を発展的に継続する。今年度は主に演技の視点から研究を進めたので、今後は、マリヴォーと同時代の他作家・思想家とその作品へと対象を広げ、18世紀前半のフランス演劇の諸相と作劇法に関する調査・研究を進める。また、これまでの研究結果を総括し、マリヴォー劇の作劇法の独自性を、18世紀前半の社会的・文学的・芸術的文脈において相対的に明らかにする。 資料の調査・収集は、主にフランス国立図書館、早稲田大学図書館・同大学演劇博物館の図書館で行う。また、国内外の研究者と意見交換を行い、多角的に研究を進めるとともに、研究成果の国内外への普及と学術交流に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本国内には18世紀フランス演劇の専門家が少なく、入手困難な資料も多い。よって次年度の研究費は、不足資料の収集・調査研究と18世紀フランス演劇研究者との意見交換を行うためのフランス出張、および関連図書の購入・資料の複写代に用いる。
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Research Products
(4 results)