2013 Fiscal Year Annual Research Report
能楽の近代化の研究―明治・大正期能楽上演記録データベースの構築を中心とする―
Project/Area Number |
23720091
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中尾 薫 大阪大学, 文学研究科, 講師 (30546247)
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Keywords | データベース / 能楽 / 近代 / 上演 / 番組 / 日本文化 / 大衆化 / 素人 |
Research Abstract |
本研究は、明治維新によって壊滅的危機をむかえた能楽を支え、明治・大正期かけて能楽の存続と復活をめざしたいわば保護団体である「能楽社」「能楽会」の活動について、その理論と実態を分析することを最終目的とし、そのための基礎データとして明治・大正期の能楽上演記録のデータベースの構築を中心的な活動に据えた。最終年度となる25年度は、23年度~24年度にかけて、データベースのために蓄積したデータの公開にむけての技術的な作業の推進を行うこと、また、具体的な研究成果として、学会・研究会で口頭発表、学会誌への論文発表を目標としていた。データベース構築・公開に関する作業としては、データに誤りや抜け等がないかチェックすることを重点的に行い、個人ホームページを開設しそのコンテンツとして「明治・大正上演データベース」のデータを試験公開することにむけて着々と準備を進めているとことである。また、昨年度以来、雑誌『能楽』や新聞記事(『国民新聞』『朝日新聞』等)を補足資料として収集し、坪内逍遙による能楽観が及ぼした影響という前年度に引き続いた課題のほか、あたらたに大阪を拠点に能楽改良論をうちだし、その理念をもとに新作能を多数発表した高木半について研究を進めた。その具体的な成果として、口頭発表「近代能楽の一事象・続考」「東アジア古典演劇の「伝統」と「近代」-伝統の相対化と文化の動態把握の試み-」(於:国際高等研究所、2013年8月28日)、学術論文「能楽の近代化と高木半―その履歴と能楽改良論への能役者の対応をめぐって―(『待兼山論叢』47号美学篇、2014年12月)を発表した。年度で一応の区切りを迎え、明治・大正期の能楽を支えたエネルギーとしての素人の支援の実態や、能楽の大衆化とその影響について具体的な事例をあげることができたことは本研究の意義としてあげられる。
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