2011 Fiscal Year Research-status Report
日中戦争期の中国における「国防映画」の製作と日本人表象の構築
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23720096
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
韓 燕麗 関西学院大学, 経済学部, 助教 (10537096)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中国映画 |
Research Abstract |
平成23年度は、計画通り、中国と香港における基礎的資料の収集・新資料の発掘に力を入れてきた。北京にある中国電影資料館と香港電影資料館で調査を行い、現存する各種一次資料とくに映像資料の発掘・収集を行った。戦時中の武漢と重慶で作られた抗日テーマの映画に関しては、中国電資料館はおよそもっとも映像資料が多く保管されている場所である。映画批評の記事など貴重な資料を閲覧し、多くの館員と意見交換した。見つけた資料を現在執筆中の国防映画論に書きいれる予定である。 戦時中における中国と日本の民間交流についての基礎的な文献の収集・読解を行う際、映像資料を収集すると同時に、各大学の資料館や政府公文書館で同時期の雑誌や新聞などの紙媒体のメディアに掲載される映画評論なども網羅的に収集・調査・分析すべきだが、たとえば1938年に内陸の武漢で刊行した映画雑誌『抗戦電影』や重慶で発行される各党派の新聞(たとえば共産党機関紙の『新華日報』、国民党機関紙の『国民新報』など)、今までの映画研究では決して重要視されてこなかった貴重な文字資料に対する解読が、史実の解明に繋がる重要な基礎的研究になるはずである。そのため、今年度は戦時中に臨時政府が一時置かれた内陸の武漢へも調査に赴き、積極的に現地の大学で情報収集を行った。 また、日本占領下の香港で唯一作られた劇映画の特別上映を東京の国立フィルムセンターで依頼し、その作品について書いた文章が香港電影資料館から発行される雑誌に掲載された。四川省の作家に対する日本人研究者による文章を中国語に翻訳し、中国で出版される研究書に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りに順調に研究が進んでいる。ただ、香港・北京・武漢の三箇所で予想以上に資料が見つかり、その調査・整理に時間がかかったため、今年度は内陸の重慶へは調査に出かけることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は前年度に引き続き、一次資料と映像資料の収集に努める予定である。とくに平成23年度にできなかった重慶における臨時政府に対する調査を行う。四川省と重慶市の公的文書を保管する資料館へ赴き、また武漢における調査もさらに深化する必要がある。また、平成24年度は発掘できた映像作品に対して比較文化研究の角度から美学的分析を行い、論文を執筆し、研究成果を踏まえた上での成果公表を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、内陸の四川省と武漢へ調査に赴き(出張費、消耗品費、複写費など)、今までの調査結果を部分的にまとめた成果を国内外の学会で口頭発表を行う予定である(出張費、学会参加費)。国内外の研究者と積極的に意見交換をし、それを踏まえて論文を執筆し、公表する予定である(消耗品費、通信費など)。
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