2011 Fiscal Year Research-status Report
『海人の刈藻』を中心とする院政期物語文学研究の開拓
Project/Area Number |
23720099
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横溝 博 東北大学, 文学研究科, 准教授 (30303449)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 院政期 / 物語 / 海人の刈藻 / 四条宮下野集 / 建礼門院右京大夫集 / 藤原頼通 |
Research Abstract |
当該年度においては、様々な研究大会・研究会への参加、研究者との交流を通して、院政期文学についての認識を深めるとともに、その知見を踏まえながら『海人の刈藻』について研究を進め、論文を発表した。2011年8月にヨーロッパ日本学協会(EAJS)会議の大会(於エストニア・タリン大学)に参加し、研究報告ならびに研究打合せなどを行った。国内外の研究者と広く交流することで、院政期物語文学研究の展望について、有益な知見を数々得ることができた。本大会では『源氏物語』の注釈書である『窺原抄』について報告を行った。国内においては日記文学会の分科会である『四条宮下野集』研究会ならびに『建礼門院右京大夫集』研究会に数次にわたって参加し、有意義な成果を得ることができた。とくに前者においては、研究会での注釈研究の成果を、宇治平等院ミュージアム鳳翔館紀要『鳳翔学叢』(2012年刊)に掲載し、連載することとなった。院政期直前の藤原頼通の時代に成った『四条宮下野集』、院政期直後の後鳥羽院時代に成った『建礼門院右京大夫集』について比較検討することで、その間に位置する院政期の文学の特質について、考察を深めることができた。以上の知見を生かし、当研究の主題である『海人の刈藻』の研究を進め、論文を作成した。論文「按察家の人々─『海人の刈藻』を中心として─」を『源氏以後の物語─継承の構図』(武蔵野書院、2012年)に、論文「院政期物語としての『海人の刈藻』─『栄花物語』もしくは藤原頼通の時代からの継承─」を『中野幸一先生傘寿記念論集(仮)』(勉誠出版、2012年)に掲載することとなった。この二編で院政期物語としての特質を新たに提示することができたと考える。以上、当該年度については、概ね研究計画通りに遂行し、研究成果を論文としてまとめることができた。次年度以降、研究をさらに深めていくことにおいて意味のある成果であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「院政期物語文学研究の開拓」という目的において、様々な研究会に参加し、研究成果を報告し、また、院政期文学についての基礎的な考察を『海人の刈藻』という作品を通して具体的に行い、二編の論文にまとめることができたことによって、順調に進展していると評価することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度の活動を概ね履行することで、研究目的の達成に一層努めたい。具体的には研究会への参加・発表、報告書・論文の作成、またそのための資料収集、資料調査のための出張、文献収集を重ねることを主とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画を推進し、研究活動を具体的に行うために、資料収集、研究会への出張において適切に使用する。また膨大な文献資料の整理と収集、また学会・研究会への資料持参や、インターネットへのアクセスの便宜のため、タブレット型PCの導入を予定している。
|