2012 Fiscal Year Research-status Report
近世和学の史的展開と文化的実践――18世紀を中心に――
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23720101
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
一戸 渉 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20597736)
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Keywords | 和学 / 国学 / 好古 / 有職故実 / 和歌 / 橋本経亮 / 藤貞幹 |
Research Abstract |
当該年度は、研究計画のうち〈18世紀の和学者における〈古今〉認識と文化的実践〉に関する研究を主として遂行した。当該年度内の主要な資料調査・収集先は国文学研究資料館・国立国会図書館・慶應義塾大学斯道文庫・国立公文書館内閣文庫・東京大学総合図書館・無窮会図書館・ 國學院大学・宮内庁書陵部・(以上、東京都内)、東丸神社(京都府京都市)であった。以上の各機関に直接赴き、関連する古典籍を閲覧・調査し、その内のいくつかについては、複写作成の手続きを行った。上記の調査に基づき、以下の研究成果を得た。 ・18世紀の好古家サークルの実態解明 18世紀後半は、日本の古代の文物へと強い関心を寄せる好古家と呼ばれる知識人が多数登場した時代である。その代表的な人物たる藤貞幹は、これまでに考古学史の分野で一定の研究が備わるものの、近世期以来、毀誉褒貶に晒された人物でもあることから、未だに評価が定まっていない。そこで「「偽証家」藤貞幹の成立」(『アナホリッシュ国文学』第3号、2013年6月刊行予定)では、そうした近世以来の評価の変遷を跡付けつつ、新たな藤貞幹像を模索する必要性を述べた。加えて、貞幹の門弟のごとき位置にあった橋本経亮という宮中に仕えた非蔵人にして和学者であった人物について、「橋本経亮の歌文資料―『丁巳詠草』解題と翻印―」(『上方文藝研究』第10号、2013年6月刊行予定)において、未翻刻の歌集資料を紹介することでこれまでほとんど知られていなかった彼の文芸活動に光を当て、更に口頭発表「出府と蟄居―非蔵人橋本経亮の誤算―」(第三回人的交流研究会、2013年3月2日、於西尾市岩瀬文庫)では、その経亮の享和元年の出府から蟄居を命ぜられるまでの過程を、従来検証されていない宮内庁書陵部蔵の『非蔵人番所日記』に主に基づいて描き出し、当該時期の京都の知識人社会のありようを捉えるためのサンプルとして提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に昨年度に調査収集した資料にもとづいて研究成果の公表をおこなった。印刷中のものも含めて単著論文3点、図書1点、口頭研究発表は1件を本年度中に公表している。また文献資料の収集に関しても、本年度中に未紹介の関連資料を一定数発見することができた。最終年度である次年度での研究活動の見通しも、現時点において、ある程度まで具体化できていると認識している。ただし、研究代表者である一戸が、本年度をもって金沢大学から慶應義塾大学斯道文庫へと転出することとなり、そのための事務的な手続き等に対処する必要が生じたため、当初計画していた調査出張のいくつかは予定を変更せざるを得なかった。とはいえ、その影響はごく僅少なものであり、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した「研究の目的」において、本研究は〈18世紀日本における契沖・荷田春満・賀茂真淵の受容と展開に関する研究〉と〈18世紀の和学者における〈古今〉認識と文化的実践〉という二つのテーマを掲げ、その解明を研究の目的とした。最終年度である次年度では、資料の調査・収集も引き続き行ってゆくが、上記の二つのテーマを統合させることを意識しつつ、主として橋本経亮および荷田春満をはじめとする荷田家の学芸の実態解明に取り組む方針である。次年度における研究上の成果については、論文及び学会発表の形で公表してゆく予定である。発表先は『斯道文庫論集』(慶應義塾大学斯道文庫発行)及び『近世文藝』(日本近世文学会発行)を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、引き続き文献資料調査のために必要な調査研究旅費(主な調査先として阪本龍門文庫(奈良県吉野町)、天理大学附属天理図書館(奈良県天理市)、相模女子大学図書館(神奈川県相模原市)、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)、東丸神社(京都府)、稲葉本家(京都府京丹後市)などを予定している)、及びそれらの資料の複写費、加えて本研究テーマに関係する古典籍や研究書などの書籍購入費、更に研究の遂行に必要な電子機器の購入のために研究費を使用する計画である。なお、収支状況報告書の次年度使用額33,582円は、研究代表者である一戸が、金沢大学から慶應義塾大学斯道文庫へと転出することとなり、そのための事務的な手続き等に対処する必要が生じたことから、当初の調査旅費の執行計画を若干変更せざるを得なくなった結果として生じたものである。ただし、さほど大きな金額ではないため、次年度に計画している国内出張旅費に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 春雨物語2012
Author(s)
井上泰至・一戸渉・三浦一朗・山本綏子共編
Total Pages
274
Publisher
三弥井書店