2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720107
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
中谷 いずみ 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (10366544)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 原水爆禁止署名運動 / 母親運動 |
Research Abstract |
本年度は、原水爆禁止署名運動におけるジェンダーの問題に注目し調査研究を行った。これまでの調査で見えてきたのは、新聞や雑誌などのメディア言説における原水禁署名運動の女性表象と同時代の母親運動における女性表象の近接性である。今後、これらの運動に潜むジェンダー構造をとらえることで、研究課題である「反戦平和運動におけるジェンダー」の問題の一端を明らかにできるだろう。本年度の研究成果は、第36回原爆文学研究会(2011年9月24日於京都大学)で「原水禁署名運動とジェンダー」として、また日本近代文学会2011年秋季大会(2011年10月16日於北海道大学)で「時間・運動・テクノロジー ―1950年代における原水爆言説の力学―」として報告した。 また原発事故以後の現在の社会状況は、奇しくも原水禁署名運動当時の状況と酷似している。研究課題に対する考察をより深めるために、そして研究成果を社会に還元するために、ワークショップ「接続の政治学」を7月と12月に開催した(2011年7月3日於大妻大学、12月10日於日本大学)。国内・外から研究者を招き、社会運動と政治、経済、メディア表象、ジェンダーの関わり等について議論を行った。研究課題を歴史的問題としてばかりではなく、現代社会にも繋がる問題としてとらえ直すための有意義な視座を得ることができた。なお、このワークショップは公開形式で行っため、研究者のみならずテーマに関心を抱いた一般の参加者を集めることができ、研究成果の一端を社会に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連資料の調査分析をすすめた結果、原水禁署名運動と母親運動の女性表象の近接性から反戦平和運動におけるジェンダー問題の糸口を見出すことができた。これを入り口として更なる調査研究を進めていく必要があるが、まずはおおむね順調に進展しているといえる。またサークル誌における女性の書き手についても、現在、調査分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
原水禁署名運動と母親運動の女性表象の近接性を踏まえ、そのような女性運動者の表象が社会運動のあり方にどのような影響を与えたのかについて調査分析を進める。この問題はおそらく、研究課題の小テーマとして掲げた日教組の平和運動における女性ジェンダーの問題に通底するはずである。これらのテーマについて同時代性を意識しながら引き続き考察していきたい。なお、小課題の一つであるサークル誌における女性の書き手についても、調査分析を進めていく。 また、2011年度は調査資料の整理までに到らなかったが、2012年度からは資料のデータベース化に着手する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き関連資料の調査分析を行うため、関連図書費、調査・研究旅費、複写費などの支出を予定している。また調査資料のデータベース化を進めるため、作業補助員への謝金を予定している。
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