2013 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアル台湾の日本語表象―黄霊芝文学を中心に―
Project/Area Number |
23720113
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
下岡 友加 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (30548813)
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Keywords | 日本語文学 / 台湾文学 / 台湾史 / ポストコロニアリズム |
Research Abstract |
最終年度の今年度においては、「研究実施計画」における第二点目である「黄霊芝の創作方法、彼の文学テーマを作品分析から明らかにし、成果をまとめる」という研究内容を遂行した。具体的には「呉濁流と黄霊芝、創作方法の比較考察」と題して、日本台湾学会(於広島大学 2013年5月26日)において学会発表を行った。さらに雑誌論文として「傀儡師とペテン師―芥川龍之介と黄霊芝―」(『台湾日本語文学報』2013年6月、第33集:83-101 頁) 並びに「戦後台湾の日本語小説・黄霊芝「仙桃の花」の表現」(『県立広島大学人間文化学部紀要』2014年3月、第9号:133-146頁)を発表した。台湾・日本の他作家との比較のなかで、より明確になる黄霊芝文学の特徴、独創性を明らかにした。「研究実施計画」の第一点目である「黄霊芝本人の発言を記録し、公にする」という内容であるが、インタヴューは行ったものの、内容的に黄以外の人物の個人情報が多く含まれる談話内容だったため、公表には踏み切らなかった。ただし今後、該当部分を削除するか、或いは取り上げられた人物の関係者の許可を得るかたちで、公にすることも検討している。 当初の研究計画に鑑みて、最終目的である「ポストコロニアル研究の蓄積と接続し、黄霊芝の位置づけをはかる」という研究内容を論文として公表することができなかったことは反省点である。しかし、黄霊芝の小説選集(『戦後台湾の日本語文学 黄霊芝小説選』渓水社、2012.6)を入力・編集して刊行し、さらに当該研究期間に黄霊芝に関する雑誌論文を6本発表し、黄自身の発言や彼の小説の方法について具体的に明らかにすることができたのは、相応の成果と考える。
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