2013 Fiscal Year Research-status Report
中世東国宗教と文芸伝承の綜合的研究―唱導、縁起、物語を視座として
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23720116
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
阿部 美香 昭和女子大学, 人間文化学部, 非常勤講師 (10449093)
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Keywords | 融通念仏縁起 / 中世宗教文芸 / 唱導 / 縁起絵巻 / 説話文学 / 上素帖 |
Research Abstract |
今年度は、『融通念仏縁起』絵巻に関する調査と研究が中心になった。前年度の米国シカゴ美術館蔵の調査(正和本上巻)に引き続き、米国クリーブランド美術館にて正和本下巻を精査したほか、大念仏寺蔵義尚本、吉井家蔵俊直本について調査を行った。また関連資料として、理圓『融通念仏勧進状』(恩頼堂文庫本、津・西来寺蔵本、三千院円融蔵本)の調査を開始したほか、『融通大念仏亀鐘縁起』絵巻(大阪・西光寺本、大念仏寺本)の調査も行った。更に、正和本に関連する絵巻作品として東京国立博物館蔵『不動利益縁起』の調査も行った。これらをもとに融通念仏縁起絵巻の成立と展開について探究を深め、融通念仏運動における画期をなす正和本絵巻の成立意義を多面的に示すため、論文「結縁する絵巻」(加須屋誠編『図像解釈学』)「中世メディアとしての融通念仏縁起絵巻」(説話文学会編『説話から世界をどう解き明かすのか―説話文学会設立50周年記念シンポジウム[日本・韓国]の記録』)を発表した。また融通念仏宗総本山大念仏寺において講演を行い、資料集『融通念仏縁起絵巻の成立と展開』を編集・配布して、研究成果の社会還元にも努めた。米国イリノイ大学での国際研究集会に参加し、宗教とパフォーマンスという視点から融通念仏縁起と能「百万」との関係について報告を行い、新たな知見を得ることができた。 唱導・物語に関しても研究を進め、安居院唱導資料『上素帖』研究の展開としての歴博本『転法輪鈔』関白家仏事に関する研究成果は、26年度刊行の報告書に掲載される予定である。また正和本『融通念仏縁起』絵巻と説話絵巻である『不動利益縁起』絵巻の引用関係の再発見から、絵巻を介した縁起と説話の交流について、美術史学と共同して東京国立博物館において研究集会を開催し、報告を行った。 このほか、涅槃講式の研究や念仏行者の事蹟の追跡など、宗教文化の研究を多方面に展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では副次的な研究対象であった融通念仏縁起に関する研究が、本格的に展開した。新出資料や重要作例の精査と多角的な分析により、中世の縁起絵巻のなかで最も特色ある発展を示した融通念仏縁起絵巻の再評価を行い、その成果を国内外の学界に提示できたほか、所蔵者を含め社会にも還元できたことは、大きな成果であった。またその過程で、美術史研究者と共同で調査や研究会を行えたことは、大きな財産となった。また、理圓『融通念仏勧進状』の再評価は、同縁起の研究に不可欠なものである。そのための調査・研究の土台を作ることができたことは、次年度にむけての弾みとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き『融通念仏縁起』絵巻と理圓『融通念仏勧進状』の国内外での調査と研究を進め、米国ハーバード大学における宗教遺産学の研究集会の報告にあわせて関連資料集を編纂し提供する。安居院唱導資料『上素帖』に関しては、歴博本『転法輪鈔』研究の成果をもとに、その公刊に向けた各篇の解題的研究を進めていく。また、唱導と仏教儀礼との関係を考えるべく醍醐寺閻魔堂の『三時勤行法則』にも取り組み、人間文化研究機構による儀礼テクストの総合的研究の展示計画に参加・貢献できるよう、調査と分析を行う。富士(伊豆・箱根)関係では、六所家資料『東泉院聖教目録』の編集を担当し年度内に公刊することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費を適切に使用した結果である。 次年度の研究費の主な使用計画は、以下の通りである。 1,研究成果を報告する資料集を編集する予定である。そのための編集・印刷費として研究費を使用する。2,神奈川県立金沢文庫をはじめ、国内外の美術館や博物館、寺社や文庫、図書館などへの資料の採訪調査、および研究会参加のための準備費や旅費、宿泊費として使用する。3,研究成果の地域社会への還元をめざした活動(文化講演など)のための準備費および旅費として使用する。4,論文執筆やデータ作成、編集に関わる諸経費として、研究費を使用する。
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Research Products
(7 results)